2008-04-06

第2回週刊俳句賞 今井聖 選と選評

今井 聖 選と選評



04「異邦人」に2点。

全体として世界が静謐。自己の裡に沈潜したものを出そうとしている。

粉雪の句の「空」。西瓜の句の「息」。夏虫の「争い」。異邦人の句の「続く」。いずれも言葉に象徴力を与えている。静謐は言葉への配慮だけでは出ない。自己の肉体(精神もひっくるめた)に向ける眼があるからである。


10「ぽろぽろと」に2点。

「春の私」の句、「春愁」の句は白眉。見えるものから発想してイメージを拡げていくという順序がどの句にも徹底している。これは俳句の出自か生来の能力か。作品全体の「色」というべきものにも統一感があり、これもまた作者の力を示している。


03「life」に1点。

技術的に完成度が高い。多くの学びの跡が文体に見える。見えることは力だが、そこを無条件に受容するのはどうか。「婚礼」の句、「手の中」の句の文体は特に常套。ここにいては危ない。「頬杖」の句、「カラオケ」の句は内容が陳腐。全体的にバランスはとれているが創造することへの意欲が欲しい。たとえ破れても。

 
07「気分はもう戦争」に一点。

「烏賊」の句は出色。あとは機智が走り過ぎた。アタマがいいひとなんだろうな。テストの句やリプトン紅茶の句は昔のモダンおばさんやおじさんは褒めるかもしれないが、そんなひとにだまされてはいけないしそんなひとをだますことに精力をつかうべきではない。機智の上をいくドンくさい「真実」がある。演出してもどうにもならない場所を、覚悟の上で見せてほしい。


総評

類想感をどう突破するかがまず問題だろう。文体が借り物で内容のテーマも類想だけど、動詞や副詞や助詞で工夫しましたというのでは、ただの「個性」狙いだ。個性じゃなくて方法を変える意気込みが欲しい。あとはモダンを辛らつに見ること、モダンの陳腐、ポストモダンの類想というのも世間には多い。批評性ばかりが強く出て現状おちょくりの内容になっても標語を読んでいるようで味気ない。右も左も前も後ろも全部見え透いているというところに自分を追い込んで、立往生してからの一歩を見たい。






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