2008-07-06

【週俳6月の俳句を読む】今村たかし

【週俳6月の俳句を読む】
今村たかし
宇宙が自分に近づいた感じ



ぼうたんの崩るるときや全て見ゆ   八田木枯

以前、千葉の千葉寺(せんえふじ)へ行ったとき、境内の花壇の一角に牡丹があり、その牡丹が散りかけていた。千葉寺は千葉一族が祈願した寺で、今はその豪族の勢いはすでにない。牡丹が崩れる様を見て、勢いのある者はいずれ滅びることを重ねて思った。この句では、ぼうたんが崩れるときその全てが見えると言っているが、それは生あるものがその生を終える時が最も純粋で素直であることを云っているように思える。

白き薔薇ものに溺るるこそよけれ   同

 ●

硬球の縫目のごとき百足虫かな   齋藤朝比古

百足虫はぞろぞろ長く少々気持ちの悪い虫であるが、足が強いので客足が付く、おあしが入るなど縁起のよい動物とされている。また、硬球といえば甲子園での高校野球を思う。百足虫がその白いボールの縫い目のようだというのである。きっとこの縁起の良い百足虫は若者の弾んだ勢いのよいボールの縫い目のように素早く動いているかもしれない。

左の目ばかり開きて昼寝覚      同
ががんぼの吹かれて自由とは違ふ   同

 ●

麦笛に真白な空の近く見ゆ   佐藤文香

麦笛は又「むぎわらぶえ」とも云う。麦の生産量は北海道に次いで佐賀、福岡が多い。作者の麦笛は何処であろうか。広々とした大地で麦笛を吹いている。そして、真白な空が近く見ゆという表現は、まるで宇宙が自分に近づいた感じが出ていて雄大な句である。

雪の日のような朝日が紫陽花に    同

 ●

心身の親に似ない子竹煮草   望月哲土

遺伝子はDNAで継承されると云う。しかし、若い世代の子供は、体付きも考え方もぜんぜん親とは異なる。竹煮草は荒れた山野に自生し、有毒であるが害虫駆除や塗布剤にもなる逞しい植物である。子はいくつになっても親は親として心配なものである。たとえ、心身が似なくても、子は丈夫で逞しく生きて欲しいものである。

人間に尻の大きさ草を刈る      同
隣人を愛せずにいる草いきれ     同
文字多き薬草図鑑梅雨の夜      同


八田木枯「華」10句 →読む
佐藤文香 「標本空間」10句  →読む
齋藤朝比古 「縫 目」10句  →読む
望月哲土 「草」10句  →読む
大野朱香 「来し方」 10句 →読む
榊 倫代 「犬がゐる 10句 →読む

0 コメント: