2008-07-06

【週俳6月の俳句を読む】野口る理

【週俳6月の俳句を読む】
野口る理
思い込みや自分ルール、ジンクスのようなもの



俳句の特徴でもある断定の美において、
思い込みや自分ルール、ジンクスのようなものが鍵となる場合がある。
そして読者は、自身のそれとは違うであろうものに少し不安になりながら、
作者のカリスマ性のようなものに惹かれつつ、魅了されるのである。



黄の薔薇はわが静脈をおびやかし   八田木枯

この黄の薔薇への恐怖は一体なんだろうか。
やがて読者も、自分の静脈を心配し始める。



縦よりも横に長くて泉なり      齋藤朝比古

作者のいる地点からの視点、だけである。
だけれど、いつの間にか読者を隣に座らせ頷かせている。



兄からは水晶もらふ夏の風邪     佐藤文香

その兄妹にしか分からない世界。
読者から少し遠いところで、水晶はなんらかの意味を持ち始める。



雑草は夏の生き方無衣無縫      望月哲土

夏の生き方、というざっくり感。
そして読者に雑草というものについてよく考えさせる。



来し方の暮るるや小屋の夏燈     大野朱香

明かりをつけて、暮れていることをさらに実感する作者。
読者は作者の居た場所を思い、居る場所も思う。



砂粒の光り出したる水着かな     榊 倫代

楽しく嬉しい海の光景が広がる。
その光景は、読者の思い出の中にもあり、より眩しく光りだす




八田木枯「華」10句 →読む
佐藤文香 「標本空間」10句  →読む
齋藤朝比古 「縫 目」10句  →読む
望月哲土 「草」10句  →読む
大野朱香 「来し方」 10句 →読む
榊 倫代 「犬がゐる 10句 →読む

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