林田紀音夫全句集拾読 032
野口 裕
立飲む牛乳おのおの目算を抱き
立飲む牛乳ばらばらの目算を抱き
一句目、昭和三十二年「青玄」発表句。二句目、句集収録形。推敲の過程、参考として。
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「青玄」発表句から「十七音詩」発表句に移る。昭和三十一年、「吹田操車場」から、句集未収録句を。
カー・リターダーの排気が祈り障害減る
カー・リターダーの強烈に噛み瞬かす
人間は弱くカー・リターダー以前の事故
ウィキペディアにカー・リターダーの説明がある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC
その説明を借りると、句の背景にあるのは次のような事実だろう。「以前は転走する貨車に構内作業掛が添乗し、貨車に備えられたブレーキを操作して貨車を減速させていた。この作業は危険でもあり、非効率的でもある」
貨物ホーム昼の裸燈が荷を急かす
弁頭厚し胃の腑が連結音こなす
少々コミカルな味が連作のテーマにそぐわないと見たか。だが、これも紀音夫の持ち味のひとつ。
煙る吹操無縁のわれら疲れて去る
「われら」が、複数の人間による吟行を思わせる。吟行の仲間に鈴木六林男がいるなら、二人の競作も納得がゆく。これ以上のことは他の文献にあたって調べる必要があるだろう。今のところは手が着かない。
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2008-08-24
林田紀音夫全句集拾読 032 野口 裕
Posted by wh at 0:03
Labels: 野口裕, 林田紀音夫, 林田紀音夫全句集拾読
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