2008-08-03

鈴木茂雄 鳥居よりも神聖な

〔週俳7月の俳句を読む〕
鈴木茂雄
鳥居よりも神聖な



向日葵の二本をゴールポストとす  白濱一羊

「向日葵」で即座に思い出すのは、ソフィア・ローレン扮するヒロイン・理髪師の娘ジョヴァンニの美しくも悲しい大きな瞳と夏のロシアの大地に見渡す限り広がる向日葵の黄色い花だ。ヒロインの夫が第二次世界大戦に駆り出されて行方不明になる。終戦後、同じ部隊にいたという男から聞いた一縷の望みもない話を頼りに夫をロシアへ探しに行くストーリーだ。戦争によって引き裂かれた夫婦の悲哀に満ちた再会と別離を描いた映画だが、いまわたしの脳裡に残っているのは、地平線まで広がる向日葵の映像と、映画『ひまわり』全編にわたって繰り返し流れていた悲しくも美しい、心に沁み入るようなテーマ音楽だ。

「ゴールポスト」とは、サッカーやホッケーのゴールラインの上に設けられた二本の柱とその柱と柱の上に渡された横木で組み立てられた立体的空間のことだろう。門にも似たこの二本の柱は何を意味するのだろう。敵の城壁あるいは砦の門にも似たゴールポスト。いやそうではない。再読、三読するとこの「ポスト」がサッカーやホッケーの「ゴール」でないことがわかってくる。そう、作者は群生するこの「向日葵」を眺めているうちに、ふと異界への入口を見つけたのだ。炎天に向かって競い立つ向日葵を見ているうちに、とくに大きくて美しい「二本」の「向日葵」を自分の「ゴールポスト」」にしたくなったのだ。そういえば、このゴールポストはまた神社の鳥居にも似ている。それならその向こうにあるのは神の住む聖域ということになり、ゴールポストはその入口ということになる。

謎めいた作品だが、何度も口ずさんでしているうちに「向日葵」の花言葉が「あこがれ、崇拝、あなただけを見つめている」ということがわかったら、少しはこの作品に近づけた気になる。作者にとって、炎天に聳え立つ「向日葵」は、サッカーのゴールポストよりも熱く、神社の鳥居よりも神聖なものに違いない。


次に引く作品も印象に残りました。

蟻止まり有象無象を見上げたる  中田剛

番号順に肉体並ぶ日の盛  奥坂まや

伸びすぎし丈をかなしむ夏桔梗  千葉皓史

いちまいの布となりたる南風  北川あい沙



丹沢亜郎 「暗い日曜日」 10句 →読む
中田 剛 「有象無象」 10句    →読む
白濱一羊 「ゴールポスト」 10句 →読む
奥坂まや 番号順  10句 →読む
千葉皓史 夏桔梗  10句 →読む
北川あい沙 柿 の 花 10句 →読む

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