2008-09-21

林田紀音夫全句集拾読 036 野口 裕


林田紀音夫
全句集拾読
036





野口 裕




枕木の凶の数字が夜に紛れる

数字に喰われた手足を夜が硬化する

数字の渦の真空包装された会議

昭和三十四年「風」発表句より。「数字」が使われた句を並べた。

一句目、枕木に書かれた数字に「4」が含まれていたか。一瞬不吉に感じたが、闇の彼方に消え去った。凶が凶でないことへのいらだち。二句目は今となっては凡庸な発想。三句目は逆に、今日から見ると「真空包装」に妙な物質感が生じている。三句とも句集未収録。

  

水葬の色を塗りこみ運河張る

昭和三十五年「風」発表句。なぜか、句集には採られていない。水葬よりは風葬の方が好みだったか。

あのころの運河は、巨大などぶ川だっただろう。何が溶けているか分かったものではない。それを、水葬の色とした。運河に呼応するように、空は大気汚染にまみれ、どんよりとした曇りか。若干、戦争の影を引きずっているようにも見える。


  

狙撃兵という死語の下から巨大な爆発

翼を折ってビル深く内包された固体

眠りの中で足枷された夜汽車の里程

「風」昭和三十五年発表句より。五七五の音律から外れ、下句長大な字余りかつ体言止めの句を拾ってみた。こうした長大な字余りの句がうまくいくか行かないかはかなり微妙なバランスの上にあるが、体言止めは比較的安定するようだ。





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