2008-09-07

石原ユキオ ありありと

〔週俳8月の俳句を読む〕石原ユキオ
ありありと



その方の場合、作品も作品ながらポートレートにものっすごいインパクトがあったのでした。

といっても、ゲイ雑誌のグラビアが飾れそうな目元の愛らしい髭熊だとか、ゲイ雑誌のグラビアが飾れそうな精悍なラガー風マッチョだとか、腐女子向け雑誌に捕捉されそうな鬼畜系美少年だとかいうわけではありませんでした。(麗しい殿方を見かけるとついつい『ゲイ雑誌の……』と考えてしまいます。ゲイでもないのにごめんなさい。)

私の腐女子アンテナにひっかかった前述のお三方は、ご本人がルックスに気を遣ってキャラを立てているタイプ。彼らの写真からは「おっしゃ、男前に写っちゃるぞ!」という気迫が感じられます。

対してその俳人は、特別な服装や髪型をしているわけでも、特別にポーズを決めて写っているわけでもありません。それでもなお、その方の写真からは、じわりじわりとただならぬ雰囲気がしみ出しているのでした。

身体はやや斜に構え、顔を正面に向けてこちらを見据えています。後ろへ撫で付けた漆黒の髪。肌は雪のように白く、薄い眉に整った目鼻立ちはまるで化粧を落とした歌舞伎役者のよう。口元は一文字に結んでいます、が、写真から目を離せば、片方の口角がにゅっと上がって薄笑いを浮かべる表情がありありと浮かんでくるはずです。


鏡には映り阿部完市話す   関 悦史

そうなんですよ。私も阿部完市さんは鏡に映るとか映らないとか、そこらへんが微妙な存在なんじゃないかと疑ってたんです。関さんの俳句を読んで、阿部さんのただならぬ感じが気になっているのは私だけじゃなかったんだって、安心しました。

シュールでゴスな「皮膜」の作品群。その最後に顔を出した阿部完市さんは、奇妙な物語を語るストーリーテラーのようにも見えます。あの、あんまりにも阿部さんが気になりすぎてどんどん脱線しますけど、阿部さん、精神科のお医者さんなんだそうです。「三十歳の頃に自らLSDを服用してその様子を自己観察し、同時に俳句も作る実験を行った」って本※に書いてありますが、なんかもう、なんか……ねぇ!?


※「現代の俳人101」2004年/金子兜太 編/新書館



西川火尖 「敗色豊か」 10句 →読む 山口優夢 「家」 10句 →読む 津久井健之 「蝉」 10句 →読む 中原寛也 「あなた」 10句 →読む 小林鮎美 「帰省」 10句 →読む 山田露結 「森の絵」 10句 →読む 関 悦史 「皮膜」 10句 →読む
田口 武 「雑草」 10句 →読む

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