後記 ● さいばら天気
第26回現代俳句協会新人賞は、岸本由香さん「鶴鳴く」と三木基史さん「少年」に決まりました。現代俳句協会賞の応募資格は50歳未満。未発表30句。現代俳句協会会員でなくとも応募できますが、協会の広報が足りないのか、今回の応募総数は48篇とけっして多くありません。受賞作と選考の概報は『現代俳句』2008年12月号に掲載されています。『現代俳句』は協会会員向けの機関誌で、書店で入手できませんが、機会があれば、ご覧になってみてください。
太田うさぎさんの「あをあをと」は、その落選作。審査員のおひとりに強く推されましたが、受賞には到りませんでした。
じつはこの「ひとり落選展」、ほんの20時間前までは企画として影も形もありませんでした。『現代俳句』の受賞選考記事を数日前に読んでいた私は、昨日土曜日の朝、ふと思い立って、うさぎさんにコンタクトをとり、その返事が戻ってきたのが、23時52分。「恥をかくのも良かろう。よし、その話に乗る」と、週俳としては誠に嬉しいご返事。ただし、パソコンのどこにあるのかわからないとおっしゃいます。「まだ85号に間に合う! 急いで探して!」と返信。その数十分後、「あった、あった」と30句作品が送られてきました。急遽、信治さんに転送。縦組画像をつくってもらい、なんとか1時間半遅れくらいでリリースできました。
「ひとり落選展」という檜舞台にめでたく載った「あをあをと」に、どうぞご感想を。どんどん書き込んでください。テキストデータも掲載(縦組画像の下にリンクがあります)、そちらを利用していただくのがよいかと。
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この号は、「ひとり落選展」のほかにも、24時前後に急遽入稿となった記事が数本(23時40分に帰宅した更新当番はテンテコマイでした)。そのうちの1本が、猫髭さんの「〔俳誌を読むスペシャル〕『俳句αあるふぁ』創刊100号記念特別号を読む」。これまで週俳ではほとんど取り上げていない『俳句αあるふぁ』にまつわる猫髭節。ご堪能ください。
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月初恒例の〔週俳11月の俳句を読む〕も多彩な批評が揃いました。三宅やよいさんの連載「鷹女への旅」は野球で言えば7回に突入。さあ、これからです。野口裕さんの「林田紀音夫全句集拾読」はもうすぐ50回。まだまだ続きます。「俳句人口1000万」伝説~いいかげんにしませんか、妄言を垂れ流すのは」(さいばら天気)は、一度は書いておこうと思っていた話題。
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さて、ここからは、ここに書いていいものかどうか、迷いましたが、訃報をお伝えします。
週刊俳句に「暮らしの歳時記」をたびたび寄稿してくれた山本勝之さんが、昨日土曜日の午後3時55分、永眠されました。詳細は申し上げませんが、急なことでした。その前の日曜日、句会を共にした私は、今も事態を飲み込めないでいるのかもしれません。
この第85号の更新作業のために24時すこし前に帰ってきたと、さきほど書きましたが、緊急入院先の病院からの帰宅でした。
山本勝之と私は同じ年で、俳句を始めた時期もだいたい同じ。俳句以外でもよく遊びました。それを書き始めると、この「後記」が終わらなくなるのでやめておきますが、週俳がらみで一点、「暮らしの歳時記」は、私が「ぜひに」と寄稿を請うた記事です。歳時記と題しながら、内容はなんだかムチャクチャ。そのムチャクチャさが私は大好きで、週刊俳句を「ツンとすました俳句っぽいウェブマガジン」にしないために(どうしたってなりませんが)、「暮らしの歳時記」をきわめて重要な記事と考えていました。マジメな俳人が読んだら怒りだしそうな記事がぜひとも必要と考えていたのです(実際には、その予想を覆して、私の耳には好評しか届いてきませんでしたが)。
山本勝之は「いかにも俳句らしい俳句」には「けっ!」と吐き捨てるような態度をとっていました。俳句的秩序、つまり「俳句におさまっているような俳句」を嫌い、それだからでしょうか、自分でつくる句は、とてもヘタクソでした。とくに最初の頃は、字が余って余って、句会の清記用紙の縦幅が足りないくらい。内容も盛りだくさん。省略や余韻なんてクソ食らえ。そんな山本勝之の俳句を、私は誰にもひけをとらないくらいたくさん読み(読まされ)、どうやら、そこそこ愛していたフシがあります。すくなくとも、「いかにも俳句らしく、じょうずに作られてはいるが、それがどーした?」といった句よりは、ずっと。
「週刊俳句」に数々のファンキーな記事を寄せてくれた山本勝之さんのご冥福をお祈りいたします。
no.085/2008-12-7 profile
■太田うさぎ おおた・うさぎ
1963年東京生まれ。「豆の木」「雷魚」会員。現代俳句協会会員。
■猫髭 ねこひげ
「きっこのハイヒール」所属。サイト「三畳の猫髭」
■三宅やよい みやけ・やよい
1955年神戸市生まれ。現代俳句協会会員。「船団の会」会員、「豆の木」に参加。句集『玩具帳』『駱駝のあくび』。清水哲男『新・増殖する俳句歳時記』木曜日担当。
■野口 裕 のぐち・ゆたか
1952 年兵庫県尼崎市生まれ。小池正博と二人誌「五七五定型」を年に一度出す。昨年11月に、第二号を発行。入手希望の方は、 yutakanoguti@mail.goo.ne.jpまで(定価なし)。その他、「もとの会」、「北の句会」、「樫句会」、「逸」、「垂人」に参加。 サイト「野口家のホームページ」
■久保山敦子 くぼやま・あつこ
1955年福岡県久留米市生まれ。「白桃」同人。第8回(2005年)朝日俳句新人賞受賞。
■西村 薫 にしむら・かおる
1956年生れ、福岡県宗像市在住。 菅原鬨也主宰「滝」所属、同人。川柳結社「川柳くろがね」所属。ブログ「エロティシズムを詠む 生命賛歌」 、「この指とーまれ!」
■陽 美保子 よう・みほこ
1957年島根県松江市生まれ。札幌在住。平成12年「泉」入会。平成17年泉賞受賞。第22回(2008年)俳壇賞受賞。現在「泉」同人、俳人協会会員。
■鈴木茂雄 すずき・しげお
1950年大阪生まれ。現在堺市在住。インターネット俳句結社「きっこのハイヒール」所属。「こてこてお好み吟行句会」に参加。HP「WEB 575 Internet Haiku Magazine」
■米男。 こめお
大阪在。季会「こてこてお好み吟行句会」幹事。サイト「(≧∇≦)ノ ハーイジャンキー」
■さいばら天気 さいばら・てんき
1955年兵庫県生まれ。97年「月天」句会で俳句を始める。1998~2007年「麦」在籍。現在「豆の木」会員。現代俳句協会会員。ブログ「七曜堂」、「俳句的日常」
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2008-12-07
後記+プロフィール 085
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1 comments:
山本勝之さんの訃報に触れ、びっくりしています。
たった一度しか会ったことはないのですが、その正体不明なところが存在感のような人だった記憶があります。
谷中の墓地を一緒に歩いたこと、今でもずっと記憶の中にあります。
ほかにたくさんの人がいたんですが、山本勝之さんが楽しそうに名のある人の墓をのぞいて歩いていた姿・・・印象的でした。
こんなくだらない追悼のコメントにしてしまいましたが、もう上京しても会えないんですね。
急にさみしい気分です。
山本勝之は、誰よりも時間をたっぷり持っていたように思っていたんですが。
関わった人たちにはきっと強烈な印象残して逝ったんでしょうね。
ご冥福を・・・・。
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