2008-12-14

〔週俳11月の俳句を読む〕さいばら天気

〔週俳11月の俳句を読む〕
さいばら天気
この「さむざむ」感が貴重



暮れなづむ富士に肩あり枯蟷螂  中西夕紀

富士山を人体のように思ったことは、そういえば、なかった。ピントは手前の枯蟷螂に合い、富士山はぼんやりと後景に広がる。

 

十七の石をならべぬ冬の暮  冨田拓也

ひとりただ17の音を並べる俳句という「行為」の、どうか邪魔をしないでいただきたい、とでもいうかのように、さむざむと在る句。この「さむざむ」感が貴重。作者が、俳句を〈する〉行為へと追いつめられていくかぎりは、読者として今後、長くこの作者の書くものに対する関心と敬意を持続していたい。

 

煮崩れるじやがいも雨音はほんもの  谷さやん

じゃがいもを煮るときの音は、雨音に似ていなくもない。外では、ほんものの雨が降っている。

 

海鞘食ってどぶんどぶんと老いてゆく  斉田 仁

気がついていたらずいぶん年をとっていた、というのが、事実、初老を迎えようとする私の実感。多くがそうではないか。「どぶんどぶん」とダイナミック(動的)に、かつ自覚的に、老いてゆくことができるのだろうか。もしもそれができるなら素敵だ。

 

桃の種ほどの暗さの鼬かな  大石雄鬼

鼬は暗い。なぜだろう。ずっとそう思ってきたことに根拠が見出せなくて、不思議な気分。食べ終わった桃、残るのは桃の種。ああ、鼬のあの暗さは、桃の種にまつわる暗さだったのか、と、納得、できるわけがない。

どうにも納得させてくれない俳句は、素敵である。読み手の外に在り続けるから、何度でもそこまで手を伸ばしてみる愉しみがある。腑に落ちる俳句の愉しみはその場かぎり。腑に落ちない句は、明日また読んでも、楽しい。


小野裕三 医大方面 10句 ≫読む
長嶺千晶 大きな月 10句 ≫読む
中山宙虫  ゆらぎ 10句  ≫読む
八田木枯 夜の底ひに 10句  読む
寺澤一雄 行 雁 アメリカ雑詠 10句  読む
中西夕紀 夢 10句  ≫読む
冨田拓也 冬の貌 10句  ≫読む
谷さやん 献 花 10句  ≫読む
斉田 仁 なんだかんだ 10句  ≫読む
大石雄鬼 狐来る 10句  ≫読む

0 コメント: