帰宅ラン 第6回 泥棒 LUGAR COMUM

帰 宅 ラ ン　……LUGAR COMUM
running home


第6回　泥　棒



師走も半ば。呑み会ばっかりなもんで、普段は余裕ブッこいてるこの私ですら、さすがにお仕事が溜まり気味。で、ここんとこ残業続き。「残業」。勤め人っぽいね、この響き。しばらく忘れていました。

しかし、このままでは今月の距離が稼げない。やむを得ず、今晩の帰宅ランは、仕事場から直スタート。２回目なんだけど、ちょっと緊張する。夕方あたりから、周囲が気になる。

10時を過ぎて、居残り組がようやくまばらになったのを確かめて、そっとＰＣを落とす。で、手ぶらのまま、何気なく奥のサーバルームに入って、すかさず中から施錠。次に、壁に並んだサーバタワーのひとつを開けて、奥に隠したリュックとシューズを引っ張り出す。…あ、やっぱり。ここ、常時冷房が効いているので、ブツは、キンキンに冷え切っている。

空調を一時停止。震えつつ、着替えに入る。まず、全身に、防寒用のグリースを摺りこむんだけど、ここだ、人に見られて一番ヤバいのは。次、ピッチピチのワコール製CW-X上下（いわゆる「もじおクン」ウェア）を装着、その上から、パタゴニア製ウインドブレーカーをフルジップで重装備。最後にグローブと耳当て代わりのAKGヘッドフォン、i-podと安全ライトを準備できたら、ようやく冷たい床に転がって、ストレッチとウォームアップ。

この間、見つけたんだけど、この部屋たまにゲストの着替えに使うらしい、大きな姿見が隠してあった。これ便利。鏡を開いて、その前でフォームを確認しながら、ついでに筋トレ代わりのレンジ・エクササイズを２セット。鍵かけてあるし、サーバ類の運転音が甲高く響くこの中なら、大概何してもオーケー。

さて、そろそろ、か？　電気を消して、ドアを細くあけて、外の気配を伺う。ドキドキ。泥棒さんみたい。小心者なもんで。

運よく誰とも出くわさず、エレベータロビーまで来た。当然ボタンは押さずに非常階段室へ飛び込む。…ラッキー、上下に人の気配なーし！　一気に、７階分の螺旋階段を、腿あげランで駆け下りる。あ、これもウォームアップの一環ね。

１階まで来た、階段室を思い切りよく飛び出して、通用出口方向へ。でも守衛ブースのカウンター前だけ、ちょっとペースダウン、中腰に。オーケー、無事通過。再びダッシュして、でもその先の駐車場側出口はパス。前回、うっかりこっちに出たら、いきなり出待ちの女子軍団に囲まれて往生した。だから、もうひとつの通用口、裏通りの方へ向うと、いかん、前から人の気配が。背中を向けてしゃがみこみ、シューズの紐を直したりして。なんとかやり過ごし、あとは、えいやー！と裏通りへと飛び出す。やったー！　人影なーし！

ああ、疲れた。

…さてと。帰宅ラン、始めますか。


［12月走行距離：141.00km］

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