2009-01-11

〔週俳12月の俳句を読む〕佐藤郁良 危うきに遊ぶ 

〔週俳12月の俳句を読む〕
佐藤郁良
危うきに遊ぶ


標本の虫喰ふ虫や冬ぬくき  榮 猿丸

題材の面白さが目を引いた一句。
標本となった(すでに命を失った)虫が、さらに別の虫によって蝕まれている。非情とも言える生と死の連鎖を「冬ぬくき」という大きな季語で包み込んでいる。

 

シンバルの黒ずんでゐる冬至かな  江渡華子

新鮮な取り合わせの一句。
音楽室の窓辺に黒ずんだシンバルが置かれている。その色合い、質感、冷たさは、冬至という季語とよく呼応して、一つの世界を作り上げている。

 

こはれ家の一塊としてこほるなり  生駒大祐

ざっくりと大きく対象をとらえた面白さがある。
朽ち果てた一軒の家を「一塊」と表現したことで、逆にその有り様がいきいきと見えてきた。


 

水にゐるごとくに風邪を保ちをる  鴇田智哉

比喩に目を引かれた一句。
「水にゐる」という感覚は、風邪のときの薄ら寒さをとらえたものであろうか。「風邪を保」つという表現もなかなかくせ者である。「をる」と連体形で止める理由はあまり見あたらない。


 

寒き夜を紙のごとくに眠りたり  さいばら天気

これも比喩に着目した一句。
「紙のごとくに」は、くしゃくしゃに丸まった反故紙のような状態を指したものだろうか。わかるようでわからない、自信をもってこうだと断言できないのは、先ほどの鴇田氏の比喩と同じ。逆に言えば、そこが引っかかりとなって、一句の魅力にもなっているのだが……。
直喩表現の魅力と危うさを、改めて思った。




江渡華子 雪 女 10句 ≫読む
大本義幸 月光のかけら 10句 ≫読む
仁平 勝 合 鍵 10句 ≫読む
榮 猿丸 何処まで行く 10句 ≫読む
生駒大祐 聖 10句 ≫読む
照井 翠  夜 鷹 10句 ≫ 読む
鴇田智哉  人 参 10句 ≫ 読む
村田 篠 冬の壁 7句 ≫読む
上田信治 週 末 7句 ≫読む
さいばら天気 贋 札 7句 ≫読む

 

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