2009-02-08

〔週俳1月の俳句を読む〕上田信治 息を吸い込むような、歌のような 

〔週俳1月の俳句を読む〕
上田信治
息をすいこむような、歌のような



新年の句は、他の季節の句以上に、季語と他の部分の関係がすべてであるような気がします。


かちかちと火点す音の淑気かな  齋藤朝比古
石鹸に牛の絵のある初湯かな   米男

新年のめでたさと、無関係かつささやかな景が、安定感のある文体のなかで、なめらかに重ねられている。


ショッキング・ピンクあるいは初御空  山田露結

めでたさと不穏さが、左右から押しあって、釣り合っている。


獅子舞のあとの塵浮く日差しかな  村上鞆彦

普通にめでたいようでいて、不穏な気配がするのは、獅子舞が眼前にもう無いから。


人類に空爆のある雑煮かな  関 悦史

悲劇と正月が釣り合って「書けて」しまう、という、ささやかな痛み。

 
  
校門に棕櫚高くあり冬休   興梠 隆

「冬休」の用のない学校に、用のない「棕櫚」がばかばかしく高い。
全てのことばが緊密にむすびつき、無駄なく働いていて、ほぼ何も言わず(情緒的なもの価値的なもの抜きに)景だけを提示している。好きだなあ。

フレームに棘百万を育たしめ
熊の皮畳まれ積まれ立方体
水門の上に部屋ある四温かな

 

東京は西に山なす新酒かな   広渡敬雄
みづならは綿虫の来る淋しい木 
山なりに雲の流るる大晦日

ゆったりとした呼吸。たとえば、上五の「は」のあとには間があって、そこに息をすいこむような、歌のような、詠嘆がある。

 

なにも買はずに出てくれば冬の虹   鈴木茂雄
山笑ふ日本武尊かな         櫛部天思
除夜の鐘屋根屋根屋根に豚の屋根に  二輪 通 



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