2009-03-29

後記+プロフィール 101

後記 ● 上田信治


先週は、にぎにぎしく100句特集でしたが、今週は、101号の通常営業です。

 

青木空知さんの作品タイトル「あたたけし」。ふと気になって(たしかに歳時記にありますが、もともと「暖かし」がなまって、「暖けし」になったのかな? と思ったのです)辞書を引いてみると。

たしかに、こういう言い方はあると分かった。でも、3つ辞書を見て、用例が「千里集」(あるいは「夫木抄」)の「暖けき春の山べに花のみぞ-」という同じ歌ばっかりで。

「あたたか」だったら「源氏」にもあるんですが(「松の雪のみあたたかげに降り積める」末摘花)、けっきょく「あたたかし」は、形容動詞?「あたたか」が形容詞化したもので、近世以降の用法だそうです(「大辞林」第三版による)。

正式度からすると「あたたか」>>「あたたけし」>>「あたたかし」なんですね。なまってるなんて思って失礼だった。

当時としては「あたたけし」なんて、俳句で言う「○○てけり」「○○にかな」みたいな、ムリヤリもいいところの「歌くさい」言い方だったのかもしれない、と思って可笑しくなりました。

あ、そうだ、「てけり」って、ごく最近の言い方かと思ってたんですけど、子規や漱石はおろか、芭蕉一座の連句にも用例があるんですね。知らなかった(延宝七年、桃青、似春、四友の三吟二百韻に「ひや飯を鬼ひと口にくひてけり」※仮名遣いはてきとうです)。

えー、ご存じの向きには常識以前だったかもしれませんが、珍しく辞書を引いたりググったりして、おもしろかったので、おすそ分けを。

 

佐藤文香さんが、祝ってくれてます。→BU819
(「呼ばれなかった」ってー、文香さんは、先月に出たばっかりだったでしょ)

 

ウラハイ=裏「週刊俳句」(本誌右上のspin-offにリンク)では、100号記念の連句が始まっております。誰でも付句を投句していただくオー プン形式ですので、どうぞご遠慮なく参加ください。

 

ではまた、次の日曜日にお会いしましょう。


no.101/2009-3-29 profile


■青木空知 あおき・そらち
1990年より俳句を始める。
現在、句歌詩帖「草藏」所属。
2008年10月、初句集『白い名前の兎』(邑書林)を上木。

■大島雄作 おおしま・ゆうさく
1952年香川県生まれ。82年、「沖」「狩」に入会。85年「狩」退会。88年「沖」新人賞、同人。2007年、「沖」を退会。季刊誌「青垣」を創刊し代表。句集は『寝袋』『青垣』『鮎苗』。第9回(1994年)俳句研究賞受賞。

■鶴岡加苗 つるおか・かなえ
1974年生まれ。2003年「夕凪」入会。06年「狩」入会。
08年「狩座賞」受賞。「狩」同人、「夕凪」同人。

■松下カロ まつした・かろ
1954年生まれ。『らん』同人。同誌ブログ『夢殻通信』http://rantsushin.at.webry.info/にて、2008年11月より『中村苑子遠望』を連載。

■小池康生 こいけ・やすお
大阪出身。「銀化」新人賞受賞。「銀化」同人。俳人協会会員。

■広渡敬雄 ひろわたり・たかお
1951年福岡県生まれ、 現在千葉市在住。平成元年作句開始、能村登四郎に師事。
「沖」「青垣」同人、俳句協会会員。平成11年第一句集「遠賀川」(ふらんす堂)上梓。同句集で中新田俳句大賞候補。平成17.18.19年角川俳句賞最終選考候補。

■野口 裕 のぐち・ゆたか
1952 年兵庫県尼崎市生まれ。二人誌「五七五定型」(小池正博・野口裕)。2月1日に、第三号を発行。入手希望の方は、 yutakanoguti@mail.goo.ne.jpまで。進呈します。 サイト「野口家のホームページ」


■かまちよしろう かまち・よしろう
漫画家。1949年静岡県生まれ。早稲田大学漫画研究会、谷岡ヤスジのアシスタントを経て漫画家デビュー。代表作「こにくらじいさん」。現在、俳句と漫画のコラボをめざしたブログ「漫俳」を展開中。

■上田信治 うえだ・しんじ 
1961年生れ。「ハイクマシーン」「里」「豆の木」で俳句活動。ブログ「胃のかたち」


1 comments:

茂根 さんのコメント...

上田信治さま

世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし -- 在原業平(古今和歌集)
にある、のどか ・・・ のどけし、と、
あたたか ・・・ あたたけし、と同じことでしょうか。いえ、私も全く門外漢なのですが。
               青山茂根