商店街放浪記10 東京 中野ブロードウェイ
小池康生
日常の生活に即した商店街もいいが、非日常の商店街も面白い。
東京の中央線、新宿から快速でひと駅、4分しかかからない<中野駅>に、<中野ブロードウェイ>という摩訶不思議な商店街がある。
駅を出て、北側に伸びるサンモール商店街をまっすぐ行くと、やがて、中野ブロードウェイに繋がる。魔窟である。
日常に退屈した時、なんだがヘンなものを見たい時、秋葉原に興味があるが“タウン”ではなく“商店街”という単位で、秋葉原的なものを味わいたい時、中野ブロードウェイに足を向けてみるといい。俳句文学館のある大久保からは二駅である。
中野ブロードウェイの臍は、「まんだらけ」という大きな漫画の古本屋だろう。一店舗だけでなく、ブロードウェイ内に幾つも専門性を持たせた店を展開している。漫画の稀覯本(高い!)、アニメのセル画、年代ものの玩具などの店に分れ、若い人たちで賑わっている。
「まんだらけ」だけではない。他にもいろいろな店がある。
古本屋、映画のポスター屋、中古のコスプレを扱うお店、フィギュアを扱うお店、メイド喫茶、だから商店街スケールの秋葉原なのである。
こういう店に縁のない人、必要のない人も多いかもしれない。
わたしもどちらかというと、そんなにこの界隈のお店を必要としないのだが、ここを歩くことに、軽いショックや、軽い疲れを覚え、それがわたしには必要なのだ。たまには、いつもと違う環境を歩かないと、人間、からだの活性が得られないように思う。
慣れ親しんだ商店街を歩くことにマンネリ感を覚え、散歩ライフにスランプを感じたりすることだってある。散歩に変化を与えると、いつものコースがまた気持ちよくなる。
中野ブロードウェイで、わたしが感激したのは、ワンコインマッサージのお店。これは人間が揉んでくれるのではなく、マッサージチエアがずらりと並び、そこにコインを入れて利用するのである。
銭湯の脱衣場に置いてあるマッサージチエア。あれのもっとレベルの高い機種である。それが一台ではなくズラーっと並んでいる。こういうお店って、あるようでない。中高年はとても嬉しい。
先日、伊丹空港国内線、搭乗口に至る長い廊下でも、マッサージチエアを見つけた。最新鋭のマッサージ機が二台置かれていて、10分だか15分で200円だった。
マッサージ器のおかげで、オタクの殿堂も、銭湯も、空港も、わたしのなかで並列に並ぶ。
中野ブロードウェイには、とんとご無沙汰だが、久しぶりに公式ホームページを開いてみると、<日本初のワンコイン検診 ケアプロ>なんてものが出来ている。検診をワンコインで・・・ブロードウエイだなぁ。
血糖値検査500円。総コレステロール検査500円。中性脂肪の検査500円。身長・体重・BMI・血圧・骨密度500円。四項目セットにすると1500円。なんだか、飲食店の料金設定のようじゃないか。
メタボ関連の血液検査が、ワンコイン500円で受けることができる日本初の健診ショップですとPRされている。確かに、オタクの殿堂に来る人たちは、メタボ検診の必要ありと思える体型が多い。いいところに目をつけたのだろうか・・・分からない。とにかく、この奇妙な“発信”が、ブロードウェイなのだ。昔、ブロードウェイの写真店で<あなたのオーラ撮影します>という看板を発見し、甚く感心したことがある。そこに飾られていた写真は、人物のまわりに、奇妙な光りの帯が走っていた。魔窟である。
考への断崖にをる端居かな 上野 泰
(一週置いての次回)
2009-05-31
商店街放浪記10 東京 中野ブロードウェイ 小池康生
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