林田紀音夫全句集拾読 078
野口 裕
千代紙に天窓明かり仄明かり
昭和五十九年「花曜」発表句。紀音夫にありそうでないタイプの句。ええやん。
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尾燈濃く犇々と雨重たく雨
いちにちが濃くすぎしぐれひとしきり
昭和六十年「花曜」発表句。連続して置かれた二句。一句目、十一月頃の夕暮れによく起こる景色。渋滞でもあると、雨に濡れた尾燈を延々と見ることになる。「犇々」がそんな連想を起こさせる。二句目は、「しぐれ」に落ち着く。そこをいかに見るかで評価が分かれる。すでに作者にとり、有季無季の分類は意識の遡上にのぼっていない。
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公園に骨の樹は照り日のきらめき
昭和六十一年「花曜」発表句。「骨の樹」は常識的に考えれば葉の落ちきった冬木だろう。現に、その前の句は、
鐘楼を残す落葉の尽きた空
であり、うしろの句が、
粉雪降る地のたそがれを濃く溜めて
であるから、季節は冬で、まず間違いはない。
しかし、季節感が勝ちすぎて、死のイメージから遠ざかることもある冬木や裸木という言葉を避けた結果が、「骨の樹」だろう。とすると、広葉樹に比べて季節感に乏しい針葉樹であってもよい。あるいは、本当に樹齢の尽きた死木をさしていることも考えられる。いずれにしろ、骨に日のきらめきは印象的だ。できれば、公園は消したいところだが、虚飾を嫌う紀音夫流からすると無理かもしれない。
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2009-08-02
林田紀音夫全句集拾読 078 野口裕
Posted by wh at 0:04
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