〔週俳7月の俳句を読む〕
中山宙虫
よく見てみると・・・
自惚と痴呆と猿と夏みかん 瀬戸正洋
「年をとると頑固者がますます頑固になる。」
もう60間近の職場の先輩がそう言った。
その先輩自身、人当たりはいいのだが、自分の信念に触れる部分は昔から頑固だった。
仕事で人とぶつかることがあれば、自分の姿勢はきちんと示しながら、最後は妥協をしてきたに違いない。
けれど、それがだんだん妥協点のハードルが高くなっていくらしい。
とにかく上に対しての目は厳しくなるばかり。
そんな先輩と対をなしていたのが、誰が見たって一歩引きたくなる上司。
「それなら俺に任せておけ。」
どんと胸を叩いて、交渉の場へ行くのだが。
帰ってくれば、真逆の結果を持ってくるのだ。
みんなげんなりとする。
「こうやって皆と飲んでると楽しい。」
宴会でこんな言葉を言う。
誰も、うなずくわけではないが。
彼の自負になっているようだ。
世界は自分を中心に動いているのだ。
あんなことがあった。
こんなことがあった。
彼の昔話は自慢話となっていく。
周りのみんなは、そこにある裏話を知っているからしらけてしまう。
それでも、その自慢話は年を追うごとにひとつふたつと増えていくのだ。
考えてみれば、頑固な先輩も自惚れの上司も定年が近い。
仕事を離れた彼らには、また新たな社会的関係が待っている。
職場という枠組みから外れた時、いったいどういう世界が見えるんだろう。
まさにこの句の世界。
きっとそうに違いない。
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2009-08-09
〔週俳7月の俳句を読む〕中山宙虫 よく見てみると・・・
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