林田紀音夫全句集拾読 089
野口 裕
発光のさくら人棲む其処彼処
平成六年、「花曜」発表句。「発光の人」で、武田泰淳あたりを想定していたのだろう。しかし、「さくら人」とすることで別種の華やぎも連想される。異種の幻想が一句に同居する不思議さが見どころ。
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この「発光のさくら人棲む其処彼処」について、「発光のさくら」で一端切れ目を入れ、「人棲む其処彼処」と読むべきではないかとの見方もあろう。確かにその方が景としては自然だろう。
そう読むとすると、この時期としては、句割れの異例の詠み方になる。この時期、七七五など上句が大きくなることはあっても、あまり途中に切れ目を入れることはやらないだけに珍しい。
海辺に火を焚きむかし葬りの火
平成六年、「花曜」発表句。ということで、リズム的に珍しい句をもう一つ。大規模なイベントなのか、あるいはやや無軌道な若者たちの行動なのか、詳細は分からないが、かつてとまるで意味の異なる火をぼんやりと眺める作者の放心。変則的なリズムが貢献している。
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2009-10-18
林田紀音夫全句集拾読 089 野口裕
Posted by wh at 0:05
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