〔週俳10月の俳句を読む〕
陽 美保子
リアリズムは残酷
鮫の群れ手鉤打たれて運ばるる 菊田一平
日頃、写生を中心とした自然詠を詠みたいと考えており、漁港も好きな吟行地のひとつである私にとって、菊田一平氏の「盆の波」の一連の作品はとても魅力的な作品群だった。私は鮫の水揚げは見たことはないが、この作品群は実際に見た者でしか詠みえない臨場感に溢れている。掲句など、「手釘打たれて」という措辞に鮫の大きさとその水揚げのなまなましい残酷さが容赦なく活写されている。
水揚げの鮫は血の色鉄の色
血溜りに削いで鮫の尾・鮫の鰭
これも同様。写真で見る限り、鮫の水揚げはおびただしい血を伴う。いかにも殺生という感じ。私たちも生き物を殺して生きているのだと思わされる。こういう場合、余分な形容詞は不要、いや、ない方がインパクトが強くてよい。そういう意味で、
吉切鮫(よしきり)の喝つと無念の牙真白
は「無念」という主観語が惜しいと思う。個人的な好みで言えば、ここは抑えて欲しかった。無論、そこが良いと言う人もいると思うが。
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2009-11-01
〔週俳10月の俳句を読む〕陽美保子 リアリズムは残酷
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