2009-11-08

〔週俳10月の俳句を読む〕すずきみのる 哀憐と虚実

〔週俳10月の俳句を読む〕
すずきみのる
哀憐と虚実


一切と別るるときの天の川  正木ゆう子
一切と溶け合ふときの天の川

虹立ちて忽ち君の在る如し   高浜虚子
虹消えて忽ち君の無き如し

このように並べてみると、「天の川」と「虹」という素材の相違はあるものの、どちらも生死(しょうじ)のことを詠っている句。ただし、両者の立ち位置の相違は、正木ゆう子が「死」の側にスタンスを置くのに対し、高濱虚子は「生」の側に立つ、という点であろうかと思う。言い換えると、正木氏の方は「生死」との一体化があり、高濱氏は「生死」に対し距離をおいているようだ。その上で、どちらの作にも、「生死」に対する哀憐の思いが籠もっているように思われる。


秋光の瀧をまぼろしとも覚ゆ  中村与謝男

神にませばまこと美はし那智の滝  高濱虚子

玲瓏たる秋光に照らされた滝が、その清澄さゆえにこの世界のものとも思われぬものとして眼前にある、そんな中村与謝男氏の句に対し、「神」という茫漠たる存在の具現としての滝、という虚子の作。「実」から「虚」へ、また「虚」から「実」へと、「滝」という存在が自在に詠われてあるように思う。いずれにしても、「滝」に対する尊崇の思いは共通しているのであろう。

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