2009-12-20

後記+プロフィール 139

後記 ● 山口優夢


この前、「古志」の会員で、第1回石田波郷新人賞を獲った西村麒麟さんにお会いしたら、以前「古志」に掲載されたという記事をコピーして持ってきてくださいました。それは「飴山實聞書」という連載で、見たところ、飴山實に縁故のある俳人に、飴山實の思い出についてインタビューしてゆくもののようでした。僕がコピーをもらったのは第4回、「金子兜太に聞く」の回。

その中に、気になる一節を見つけたので、少々長いけれど引用してみたいと思います。なお、この記事自体は、兜太の語りという形式で構成されています。

これは飴山から直に聞いたように思いますが、「新しいということは、ちっとも新鮮じゃないんだ」と言っていました。これは印象的な言葉でしたね。新しいものは、いずれ古くなると。よく、新しいものを求めるなんていう人が俳句の世界には多いけど、それはいずれ陳腐化する意見だと。本当の新鮮と言ったら何かと言えば、真実というかな、真だと。「真は新なり」。本物こそが、本当に新しいんだと。俺は本物を書くんだと、そういうことを言っていたのを覚えています。(「古志」2007年9月号)

社会性俳句から古典回帰した飴山らしい言葉のようにも思うけれど、実際、なかなか示唆的な言葉と言えるでしょう。そして、若手のアンソロジー集である「新撰21」がつい先日邑書林から出たこのタイミングで、しかも来週には新撰21竟宴でパネリストとして出席する僕にこの記事を見せてくるというところに、麒麟氏の何らかの意図を感じないでもないのですが、それは勘ぐりすぎというものでしょうか。

21世紀最初の新人たちが(もちろん僕も含めて)本当に「新鮮」かどうか。それは時の流れを経てみないと本当には結論が出ないことかもしれません。だが、少なくとも我々若手が何を「新鮮」と考えているか、あるいは新鮮なものなどそもそもない、と考えているのか、そういうことくらいは発言できるはずだし、してゆくべきでもあるでしょう。それが、「僕らこそ新たな「天才」なのだと高らかに偽称する」(「新撰21」中、外山一機の寄せた作句信条より)第一歩になるのでしょうから。

そういうわけなので、来週12月23日の新撰21竟宴、もしよろしければ皆様足をお運びくださいませ。詳しいお知らせはこちら

 

先週、村田篠さんが予告していた「新撰21」に絡んでの企画、さっそく今週から始まりました。21人それぞれが挙げた100句の中からそれぞれ1句を選び、鑑賞を寄せるというこの企画。今回は最初ということもあり、運営側が書いていますが、これからいろいろな方に原稿をお願いしてゆく方針です。こちらもお楽しみに。

 

若手の話ばかりになりました(手前味噌ですみません)が、もちろんそれ以外も今週号は読み応えある記事が揃っています。現俳青年部の「俳句とインターネット」レポート後篇もリリースされています。その天気さんの記事にもあるように、目先、小手先の話にならず、冷静に将来を見据えようとしている議論がなされており、興味深い指摘もちらほら。ご一読ください。

 

ではまた、次の日曜日にお会いしましょう。


no.139/2009-12-20 profile


■藤 幹子 ふじ・みきこ
1978生。『炎環』会員。岡山在住。

■山田真砂年 やまだ・まさとし
1949年東京生まれ。「未来図」同人、俳人協会幹事、日本文藝家協会会員。句集に「西へ出づれば」(平成7年 第19回俳人協会新人賞)、「海鞘食うて」。

■斉田 仁 さいだ・じん
1937年群馬県高崎市生まれ。1971年「麦」入会。現在「麦」同人、現代俳句協会会員。句集に『斉田仁句集』(1982年・八幡船社)ほか。

■小池康生 こいけ・やすお
大阪出身大阪在住。「銀化」新人賞受賞。「銀化」同人。俳人協会会員。

■野口 裕 のぐち・ゆたか
1952 年兵庫県尼崎市生まれ。二人誌「五七五定型」(小池正博・野口裕)。2月1日に、第三号を発行。入手希望の方は、 yutakanoguti@mail.goo.ne.jpまで。進呈します。 サイト「野口家のホームページ」


■上田信治 うえだ・しんじ 
1961年生れ。「ハイクマシーン」「里」「豆の木」で俳句活動。ブログ「胃のかたち」

さいばら天気 さいばら・てんき
1955年兵庫県生まれ。1997年「月天」句会で俳句を始める。1998~2007年「麦」在籍。現在「豆の木」会員。現代俳句協会会員。2003年「麦」新人賞、05年、06年「豆の木賞」受賞。ブログ「俳句的日常

■村田 篠 むらた・しの
1958年、兵庫県生まれ。2002年、俳句を始める。2003年「魚座」入会。2005年「魚座」新人賞。2006年「魚座」終刊。現在「雲」同人。「月天」会員。俳人協会会員。「Belle Epoque」

■山口優夢 やまぐち・ゆうむ
1985 年、東京生まれ。東京大学大学院修士課程2年。東大・早稲田など東京の学生俳句サークルやTHCの句会などに参加。第六回俳句甲子園団体優勝・個人最優秀 賞。第 二回龍谷大学青春俳句大賞大学生部門最優秀賞。第四回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。好きな惑星は火星。ブログ「そらはなないろ」


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