【週俳1月の俳句を読む】
上田信治
新春特別作品を読む
晴れて久しき元日の祖父屏風立 八田木枯「庚寅歳旦」
〈はなびらの欠けて久しき野菊かな 夜半〉を連想、このキンキラキンの眩しさは、もちろんそっくり異界の景なのだ。
鳥追のしはがれごゑの猥らとも
ひとりでにひらくことあり歌留多函
など、正月早々、百鬼夜行であり(「鳥追」はもう妖怪のひとくさとしか言いようがなく)今年もろくなことがなさそうだが、
ゆつくりと揺れて繭玉有卦に入る
この「有卦」の、あやしさ。見えているものが空間ごと、自分ごと「あちら」へ移りゆく、そのきっかけが、正月飾りという土俗性であることの面白さ。
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梟のいる夜である豚まんも 坪内稔典「梟と豚まん」
倒置法はループの技法、頭と尻を結わえつけて一句を立体化する。
「梟のいる夜である」。そして「豚まんも」また「梟のいる夜である」。
だいじなことなので二回言いました。
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挨拶のこころが大事 季語よりも 筑紫磐井「元旦」
無季5句。内輪の話で恐縮ですが、作者・筑紫さんに「この一連のタイトルはどういたしましょう、「新年」がよいように思うのですが」とご連絡さしあげたら「「元旦」としましょう。季題は限定的でないといけません」というお返事をいただき、深く感じ入った次第です。
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元旦の風がおいしい 気のせいだ 樋口由紀子「鯛」
そして、それでも「おいしい」。汁粉に塩を利かせるように、現代人として、新年を寿いでいる。
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初富士のいただきや雲吹かれ発つ 小澤實「初富士」
夕日が見事な、と思って高いところに上ってみると、東京なら西っかわにある富士山の、かかっていた雲がみるみる吹かれていくところは、金色の炎のようだった、と。
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白雲に白雲つるむぽこんぽこん 関悦史「白雲」
喝采的に白雲よぎるぞ野老の上
「白雲」というきれいなような汚いような(白癬の別名)語、新年詠というフレーム、そして永田耕衣オマージュの、掛け合わせ。たいへんにおめでたい。
白雲不意に穂長を垂れて心身よ
そして国民的身体のほめ歌である。
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蹴った手毬が仏壇を破壊中 佐藤文香「六句」
鴨肉の白いあぶらを食べている
目に浮かびます。
美しく燃える森聴く三日かな
■三木基史 雑音 10句 ≫読む
■谷 雄介 サ ラリーマン戦線異常なし (1) 10句 ≫読む
■明隅礼子 冬銀河 10句 ≫読む
≫新年詠(1)第141号 2010年1月3日
≫新年詠(2)第142 号 2010年1月10日
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2010-02-07
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