2010-02-07

【週俳1月の俳句を読む】 上田信治 新春特別作品を読む

【週俳1月の俳句を読む】
上田信治
新春特別作品を読む




晴れて久しき元日の祖父屏風立  八田木枯「庚寅歳旦」

〈はなびらの欠けて久しき野菊かな  夜半〉を連想、このキンキラキンの眩しさは、もちろんそっくり異界の景なのだ。

鳥追のしはがれごゑの猥らとも
ひとりでにひらくことあり歌留多函

など、正月早々、百鬼夜行であり(「鳥追」はもう妖怪のひとくさとしか言いようがなく)今年もろくなことがなさそうだが、

ゆつくりと揺れて繭玉有卦に入る

この「有卦」の、あやしさ。見えているものが空間ごと、自分ごと「あちら」へ移りゆく、そのきっかけが、正月飾りという土俗性であることの面白さ。



梟のいる夜である豚まんも  坪内稔典「梟と豚まん」

倒置法はループの技法、頭と尻を結わえつけて一句を立体化する。
「梟のいる夜である」。そして「豚まんも」また「梟のいる夜である」。
だいじなことなので二回言いました。



挨拶のこころが大事 季語よりも  筑紫磐井「元旦」

無季5句。内輪の話で恐縮ですが、作者・筑紫さんに「この一連のタイトルはどういたしましょう、「新年」がよいように思うのですが」とご連絡さしあげたら「「元旦」としましょう。季題は限定的でないといけません」というお返事をいただき、深く感じ入った次第です。



元旦の風がおいしい 気のせいだ  樋口由紀子「鯛」

そして、それでも「おいしい」。汁粉に塩を利かせるように、現代人として、新年を寿いでいる。



初富士のいただきや雲吹かれ発つ  小澤實「初富士」

夕日が見事な、と思って高いところに上ってみると、東京なら西っかわにある富士山の、かかっていた雲がみるみる吹かれていくところは、金色の炎のようだった、と。



白雲に白雲つるむぽこんぽこん 関悦史「白雲」
喝采的に白雲よぎるぞ野老の上

「白雲」というきれいなような汚いような(白癬の別名)語、新年詠というフレーム、そして永田耕衣オマージュの、掛け合わせ。たいへんにおめでたい。

白雲不意に穂長を垂れて心身よ

そして国民的身体のほめ歌である。



蹴った手毬が仏壇を破壊中   佐藤文香「六句」  
鴨肉の白いあぶらを食べている

目に浮かびます。

美しく燃える森聴く三日かな



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