2010-02-07

【週俳1月の俳句を読む】さいばら天気 キンッときれいな音が鳴る

【週俳1月の俳句を読む】
さいばら天気
キンッときれいな音が鳴る


子の生れて家は花野の風まとふ  明隅礼子

子どもの誕生は、こんなにもやさしいもの(空気、色、ことば…)をもたらすのですね。経験がないという狭隘な理由でもって、私は、「子の生れ」も「家」も、自分の思いのなかに入り込まないようにしてきたフシがあります。でも、この句を読んだあと、なんだか気持ちがほぐれました。この手のことと、これまでとは違う接し方ができそうです。

句に「ありがとうございます」と言いたいなんて、そうそうはありません。



オレンジのへそ雑音を閉じ込める  三木基史

中身は雑音がつまっているのに、表面は、キンッと、きれいな音が鳴っている。「雑音」という大量の連想を引き寄せそうな語が、それを免れ、ただ、オレンジ1個が読者の目の前に置かれるだけ。

「箸置に箸ある重さ春の風邪」の句、箸の重さという把握は興趣。なのに、「春の風邪」と、作者のサイドへと展開/解決してしまったのは、さびしい(と、一読者たる私は思います)。



谷雄介「サラリーマン戦線異常なし(1)」10句。こりゃダメだ、と思います。

理由1
かの「サラリーマン川柳」にこの10句を応募したら、そのまま評価の俎上に載り、そののち落選するでしょう。それではいけない。係りの人が「え? なんで、これがサラ川に?」と大いに訝るようでないといけない。サラ川と同じ土俵に載る余地を残すようではダメでしょう。

理由2
外連(けれん)に必須の「趣向」というものが足りない。趣向とは、読者にとって一種のハードルです。ことばをよく遊ぶ人は、低いハードルでは満足しません。趣向がないので、どの句もすっとわかります。それはすなわち、つまらないということです。これは、とりわけ外連において致命傷。

理由3
自己戯画化、この手のことをやるのに最もオトナな武器であるところの自己戯画化が不充分。人を殺すな。課長に夢見させるな。自分でやれば、ここ、オイシイところ。

なお、この10句をまちがってプラス評価する人がいるとしたら、きっと、「サラリーマンになってまだ日が浅いから、いろいろあるだろうが、がんばってるじゃないか」ってな具合に、近年よく言われるところの「上から目線」で評価するのだろうと思います。

と、まあ、全面的に否定しておいて、「鳥葬」や「くさりかたびら」といった材料は面白い。戦記物、戦国歴史物、社会科学分野その他、ネタを広く蒐集されんことを。続篇(2)以降は、しかたないので(句稿依頼した私の責任において)ウラハイあたりで面倒を見る所存。

それともうひとつ。シンプル過ぎる外連、微量の毒気は、誌上にあっては読者たる私を満足させるに遠いが、企業内では年長者から「うい奴」とかわいがられること必至。がんばれ、サラリーマン谷雄介。

で、なんで、こんな私信のような感想文を、しかも本気で書いてしまったのか。自分でもわからない。


明隅礼子 冬銀河 10句  ≫読む
三木基史 雑音 10句 ≫読む
谷 雄介 サ ラリーマン戦線異常なし (1) 10句 ≫読む
新年詠(1)第141号 2010年1月3日
新年詠(2)第142 号 2010年1月10日

2 コメント:

猫髭 さんのコメント...

>(2)以降は、しかたないので(句稿依頼した私の責任において)ウラハイあたりで面倒を見る所存。

サラリーマンの賞味期限が切れ、人間の(あ、猫か)消費期限の切れる仏壇までは俳壇で遊ぼうと、主にウラハイで棲息している野良猫としては、「しかたないので(句稿依頼した私の責任において)ウラハイあたりで」というのは異議あり。

「サラ俳」をオモテで勝負した以上、最後までオモテで仕事を全うしてください。
実社会に喩えると、新人が仕事で一度失敗をしたからと引っ込めることはなく、責任者がフォローして現場で仕事を全うしてこそ、新人も伸びるし、会社も評価されます。客は、現場で一生懸命やっていて、結果的にダメだとしても、その新人を批難することは絶対にありません。必ず会社として対応する事を望みます。したがって、天気さんのアドバイスを生かして、次もオモテで挑めばいいので、そこで佳い句が詠めれば、客は評価しますし、新人も伸びます。失敗が許されるのは新人のうちだけ。失敗は繰り返さないのがプロですが、それは失敗して痛い思いをしないと学ぶ事が出来ません。

人選は上司の責任であり、「サラ俳」詠めという上司も変なことは変とはいえ、わたくしは客としては「鳥葬を眺めそれから打合はす」一句に瞠目したので、引き続きチャレンジしていただければと存じます。

>で、なんで、こんな私信のような感想文を、しかも本気で書いてしまったのか。自分でもわからない。

サラリーマンとしての自分の経験から言えば、天気さんは「対面」ではなく「本気」で言えるから、悪い上司ではありません。普通は怒る時は誰もいないところで怒るのが筋だけどね(笑)。

tenki さんのコメント...

誠に有意義なアドバイス、ありがとうございます。

「主にウラハイで棲息している」点は
わたくしめも同様です。

で、ですが、「ダメだからウラハイで」ってのはダメなんだよ、とおっしゃるのはよーく理解できます。では、本誌で(2)以降を、作者の谷雄介氏と交渉折衝に入らんとす。と、ここで申し上げてしまうと、他の運営から「ちょっと待て」の声がかかりそうでもあり。

(2)はどこに登場するかはお楽しみに、ということでしょうか(『俳句』『俳句界』『俳壇』等を含め)

 鳥葬を眺めそれから打合はす

いいですね。