【週俳1月の俳句を読む】
岡本飛び地
ただただ、かっこいい
書初のはの字つの字に日の字かな 鈴木不意
一字一字を区切るこの書き方が新鮮で面白い。
一文字ずつ、丁寧に、集中して書いているとわかる。
一生懸命 はの字 を書いて、
次に つの字 を書き始めて、
その時にはもう はの字 のことを忘れている。
そんな風にして書くもんだから、全体のバランスが崩れちゃってるかもしれない。
まだ習ってない漢字をひらがなで書いているのだと思うと、なお愛らしい。
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天の水地の水に跳ね初景色 三木基史
まず始めに、水と水が触れる一点、かつ一瞬。
少しだけ視界が広がり、跳ねる水。
水の出所を辿ると見える天と地。景色全体。
この視界の広がりが楽しい。
新年にふさわしい壮大な景色になる。
決して良い天気ではないはずなのに
神々しいくらい明るい景色が浮かぶ。
ただただ、かっこいい、と思う。
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去年の4月にサラリーマンになった。
サラリーマンにとって、仕事とはある意味、戦闘だと思っている。
成果を挙げるために、強くなるために、戦わなければならないと。
だから、先週号の週刊俳句の目次にこう書いてあり、嬉しく思った。
「サラリーマン戦線異常なし (1)」谷雄介
そうか、谷よ。
後輩でありながら先に社会人になった谷よ。
お前も仕事を戦だと思い、日々戦っているのか。
ならば君は戦友だ。
同じ時代の中で共に戦おうではないか、なあ谷よ。
と思って読み始めた1句目が
満員電車より吐き出さる一死体
ちょっと違った。
ホームに立ち、足元に倒れ伏す一人の男を見下ろす。
彼が乗っていた電車は去ってしまった。
見覚えのあるシルエットとひびの入った眼鏡。
鞄からこぼれた社員証には「タニ・ユースケ」の文字。
タニよ。君は毎日、こんなになるまで押し潰し、押し潰され、
それから一日が始まっていたんだね。
敬礼。
疲れ果てた君の魂が少しでも安らげるように、
横たわるタニの傍らで、ずっとずっと、敬礼をし続けよう。
「サラリーマン戦線異常なし (2)」を読む日が来るまで。
■明隅礼子 冬銀河 10句 ≫読む
■三木基史 雑音 10句 ≫読む
■谷 雄介 サ ラリーマン戦線異常なし (1) 10句 ≫読む
≫新年詠(1)第141号 2010年1月3日
≫新年詠(2)第142 号 2010年1月10日
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2010-02-07
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