【週俳2月の俳句を読む】
陽 美保子
アバウトなあたたかさ
燃えあとのまた燃えだしぬ寒四郎 田中英花
焚火が下火になってきて、さあ終ろうかという時、風が吹いてきてまた火の勢いが戻ることがある。それが寒さを一層きわだたせる。「寒四郎」の季語が利いている。この句を読んで、心の中で「北風小僧の寒太郎♪」となぜか歌ってしまった。
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おほかたは鴨おほかたは眠りゐる 田中英花
浮寝鳥の光景はたしかにこうだ。鳥に詳しくない人でも、だいたいあれは鴨だなということは分かる。まあ、おほかたは鴨ということになる。そこで、ちょっと図鑑を調べてみると、カモ目カモ科の多いこと!マガン、マガモ、カルガモぐらいは当然カモ科とわかるが、白鳥までカモ目カモ科なのだ。もちろん、白鳥を見て鴨という人はいないだろうけれど。分類ってどうなっているんだろう。
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獅子舞に噛ます華甲の頭かな 伊藤伊那男
華甲とは数え年で61歳。つまり、還暦と同じ。「華」の字は、「十」が6つ「一」が1つで61となる、「甲」の字は、「甲子」で干支の最初であるというのが語源らしい。この字面、はなやかでめでたそうで新春を寿ぐ獅子舞ととても相性がいい。同じ意味でも「還暦」ではつまらないだろう。
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生成りやらオフホワイトやらあたたかし 三浦郁
この「あたたかし」は生成り≒オフホワイトの色の「あたかし」でもあるし、それ以上に「○○やら○○やら」という言葉遣いの「あたたかし」でもあるのだ。この「やら」という言葉、とても含蓄がある。「≒」というアバウトなニュアンスを出すのに絶妙だし、「まあ、うるさいこといわなくても、どっちでもいいじゃない」と言った「あたたかい」雰囲気がある。
■田中英花 おほ かたは 10句 ≫読む
■古谷空色 春夕焼 10句 ≫ 読む
■伊藤伊那男 華甲の頭 10句 ≫読む
■西村我尼吾 アセアン 10句 ≫読む
■三浦 郁 きさらぎ 10句 ≫読む
■守屋明俊 浅川マキ追悼 10句 ≫読む
■小倉喜郎 春の宵 10句 ≫読む
■裏 悪水 悲しい大蛇 10句 ≫読む
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2010-03-14
【週俳2月の俳句を読む】陽美保子
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