【週俳3月の俳句・川柳を読む】
やすらかな気持ち……大川ゆかり
かげろふに鳥の入りたる悼みごと 石嶌 岳
最近、身近に死というものを経験することが多くなったせいかもしれないが、死や死後の世界に対する、これまで持っていたイメージが、以前と少し違うものになってきた。
それを、具体的に一句にしてあるように思えたのが、この句。
実景なのだろうが、かげろうへ「飛ぶ」でも「消える」でもなく「入りたる」と、最も何でもない淡々とした表現であることが、いっそうその感を強くする。「悼みごと」と結んであるものの、もちろんそこに静かな悲しみはあるが、深刻さや暗さ、怖さというものは、私には感じられなかった。
数年前までは、遠い遠い別の世界、と思っていたのが、そう遠くはない、まるで日常と隣り合わせにあり、そこに逝った人たちが、いてくれるような、やすらかな気持ちになれた。
たとえ、自分がゆくその日までは、けして会えないにしても。
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春の星つないで重信の改行 長田美奈子
高柳重信の多行形式の句が作り出す、独特の雰囲気は誰もが感じることだろう。言葉を表す文字と文字との空白や配列は、作者から読み手への息づかいであり、間であり、時空であり、さらなる詩情を生みだしている。
春の星つないで」はそれらの事の作者なりの表現であり共感できた。重ねて美しさもある。
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川柳を、これだけまとめて読んだのは、初めてだった。目の前にある言葉に何度も立ち止まってしまうような感じがした。
満月の顔をささっと整える 広瀬ちえみ
ポケットに見しらぬ人の手がありぬ
死のように孔雀の喉のはしき青 石部明
その中でもこれらの句は近づいてきてくれた。
川柳の作品群を読後、何句か俳句がすっとできた。このところなかった事だ。鈍りがちだったの脳のどこかに刺激をいただいたのは間違いない。
川柳作品
■石部 明 格子戸の奥 7句 ≫読む
■石田柊馬 キャラ 7句 ≫読む
■渡辺 隆夫 ゴテゴテ川柳 7句 ≫読む
■樋口由紀子 ないないづくし 7句 ≫読む
■小池正博 起動力 7句 ≫読む
■広瀬ちえみ 鹿肉を食べた 7句 ≫読む
■曾根 毅 神域 10句 ≫読む
■山下つばさ 春は沖縄 10句 ≫読む
■石嶌 岳 紅 10句 ≫読む
■長田美奈子 日の本 10句 ≫読む
■小久保佳世子 雛のごとく 10句 ≫読む
■山田耕司 長崎屋桐生店地下食品売場吟行記 10句 ≫読む
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2010-04-11
【週俳3月の俳句・川柳を読む】 大川ゆかり
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