林田紀音夫全句集拾読 115
野口 裕
雨だれを聞く酔いの果て彩史亡し
昭和四十一年、未発表句。神生彩史については、―俳句空間―豈weeklyの「俳句九十九折(17)
俳人ファイルⅨ 神生彩史」(冨田拓也)に詳しい。
昭和四十一年四月十七日逝去(『現代俳句大辞典』明治書院による)。
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風のポプラが痛い真昼の手を垂れる
一個のレモン有刺鉄線夜に沈め
痛い梢となり鉄鋼の死の手振られ
昭和四十一年、未発表句。一句置きに三句並んでいる。痛みの感覚を様々に書いてみた、というところ。二句目のレモンが梶井基次郎を連想させる。
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雨たまるてのひら夢の空母
昭和四十一年、未発表句。「海程」発表句で、句集収録句でもある「乳房をつつむ薄絹夢の軍楽隊」が同年。どちらの句も、「軍」に対して価値判断を保留した状態で句を展開している点が、紀音夫の句としては珍しい。未発表句から発表句へと変化したという道筋を付けたいところだが、詳細は不明。
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2010-05-16
林田紀音夫全句集拾読115 野口裕
Posted by wh at 0:05
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