【週俳4月の俳句を読む】
ぴっ・ぱっ・すっ……大井さち子
陽炎の野を抜けし身の細りけり 藤田直子
ゆらゆらと野の空気が揺れている。まるで透明な炎のように。一歩足を踏みいれればそこは異空間、何かを生み出しつづけるかのようにエネルギーが渦をなす。
そんな陽炎の野を抜けた身はすでに別のわたくしである。
ボンネット滑りふたたび飛花となる 松尾清隆
ひとたびボンネットに落ちた花びらが、つつうっと滑ってまた舞い上がる。金属の照りに桜の花びらのやわらかさが美しい。花びらもまた旅の途中である。
改札をとほるスピード桜咲く 満田春日
駅の改札口を通る。カードをかざすとぴっと読み取り、ぱっと開いてすっと通る。
毎日繰り返すひとつのリズム、ぴっ・ぱっ・すっ。
日常は流れ過去が堆積し続ける。
そんな中、ああ今年も桜が咲いた。
わたしたちはいつも何かを通り過ぎている。それは陽炎の野であったり、改札であったり、街角やボンネットや友達の笑顔であったりする。
そして俳句とは、通り過ぎる途中にふと立ち止まるなつかしさであるのかもしれない。
■松尾清隆 飛花となる 10句 ≫読む
■蜂谷一人 波蘭 10句 ≫読む
■藤田直子 踏青 10句 ≫読む
■満田春日 スピード 10句 ≫読む
■田島健一 残酷 10句 ≫読む
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2010-05-02
【週俳4月の俳句を読む】大井さち子
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