オーロラ吟行
第4日 チェナ湖でアイス フィッシング 〔後篇〕 ……猫髭 (文・ 写真)
≫承前
これが本当のアラスカの寒さなのよ、これをわかって欲しかったのよ、やった~♪とりんママ一人原住民化して大はしゃぎ。でも、これでも春だなあ、って感じがするのよねえ、アラスカで生きていると。ケツの毛まで凍りそうな寒さのどこが春なのよ。ほら見て御覧よと、りんさんが雪林を指差すと、雪の中から確かに草の芽や種をはじいた跡がそこかしこに。あの捩れたような草がファイアー・ウィードよ。火事跡に真っ先に生えるほど生命力が強いピンクの綺麗な花である。「冬来たりなば春遠からじ」You must believe in Spring.
爆音に振り返ると、スノーモービルが2台湖の上を爆走してくる。アラスカは川や湖が凍結すると、スノーモービルがそこを道路として利用するのよとりんさん。あら、ほんとにアラスカ的だわね。凄え、1台は素手で走ってやがる。さすが、アラスカ・ライダー。
スノーモービル傾ぎ夕焼け傾ぎ りん
そろそろ帰ろうかと車まで歩いて振り返ると、チェナ湖の夕焼けの幕開けだった。大気が恐ろしく澄んだアラスカの夕焼けはまるでオーロラのようだった。また、それを見つめるりんさんの目は温かかった。
エスキモーの目であふぎけり冬夕焼 猫髭
(5日目に続く)エスキモーと化した4人は、ワイルドな気分になり、ディナーは、前回狙いを定めた地ビール屋さん「シルバー・ガウチ」でがっつり食わん。予約をしていなかったので、バーでしばし待つことに。勿論、ビールを飲んで。何かつまみに取ろうと、アメリカ名物「バッファロー・ウィング」をオーダー。チキンの手羽やウィングを塩胡椒して、フライパンで炒めても、オーブンでロースとしても、油で揚げてもいいのだが、最後に猫髭御用達のFRANK'S REDHOT Wings Sauceをからめればいいだけである。オーブンや揚げるのは面倒なので、猫髭式「バッファロー・ウィング」は、フライパン一丁で、オリーブオイルにニンニクを入れて香りを出してから塩胡椒しておいた手羽先を炒め、最後にこのソースを入れてざっと炒めながら絡めて食べる。辛いのは口に合うかと心配したが、大君、中の君、いたくお気に入り。合うんだよねえ、ビールにこれがまた。
皆ポークやシー・フードを頼む。わたくしはラム肉のラック。アメリカのラム肉は、肉がたっぷり。ビールはこの前確認済みだから、皆おいしい。りんさんがチェリー・エールを頼む。味見させてもらうと、何とチェリーの香りのビールで、なかなか料理と会う。
結局食い切れなくて、またもやドギー・バック。その代わり、今回はデザートをどかっと頼んだ。これぞアメリカというチョコレート・ケーキBlack & Tan Brownies(訳すと「黒と褐色の小魔人」)5.50$に、ブラックベリーのクリュム・ブリュレ6.50$。中の君が楽しそうにクリュム・ブリュレの表面の砂糖をフォークでカチカチ割る。
帰宅して、三連荘の句会。お腹パンパンなので、りんさんハンドメイドの苔桃のお酒を飲みながら。酸味がなかなかイケル。
となるとつまみが欲しくなる。これまたりんさんとアラスカの仲間が作った、これは紫蘇でもち米を蒸したのを巻いたものをピクルスの汁に漬けたのだろうか。もちもちして苔桃の酸味とは違う紫蘇の酸味が相乗効果。
チェダー・チーズを買って来たので、余っているバジルと生ハムで巻く。わたくしはカマンベールが苦手なので、オーソドックスなチェダーかモッツァレラを生ハム、特にコッパという豚の首の生ハムで巻く。イタリア料理だが、パーティなどで季節の野菜を巻いて作ってあげるとアメリカ人も喜ぶよと言うと、目借時千鶴羽君が、今日初めて口を利いたというように、猫さんて凄過ぎると、エイリアンを見るような目で言う。何よ、その言外に「俳句以外は」というトンボのようなつぶらな目付きは。
実はわたくしの作る料理は、ほとんどが高齢の母のために工夫した介護料理なのだが、介護料理と言っても、栄養のバランスを考えてという発想はしない。食べることで生きている楽しさを味わえるというのが目的の介護料理である。今日はどんなおいしいものを作ってくれるのだろうと母の料理する背中を見て育った子どもは、もう一人では歩くことも覚束ない母から「コックさん、今日は何を作ってくれるの」と言われて、その季節の旬の幸から母の食欲をそそる創作料理を考えるのが介護料理ということになる。ただし、母は辛いのが苦手なので、バッファロー・ウイングはわたくしの酒のつまみである。
22:00を過ぎて、オーロラ観光御一行様到着。なんと、昨日はチェナ湖へオーロラを見に行ったそうである。マイナス40℃近かったんでないの。旅の人にも話を聞くと、あの寒さではカメラの動きが鈍くなるそうである。写真を見せてもらうと、おお、まさしく今日行ったチェナ湖ではないか。というのが冒頭の写真。
生憎と、この夜は晴れていたのに、オーロラは出なかった。3時ごろ観光客たちはダウンタウンのホテルへ戻って行った。大君、中の君が部屋に戻った後、りんさんと苔桃酒を飲みながら四方山話をしていて、4時ごろそろそろ寝ようかと、寝る前にテラスに出て満天の星を見上げたが、やはりオーロラは出ない。それにしても、本当に星が綺麗。北極のそばなので北斗七星が縦に現われ、柄杓の柄のところが掴めそうな近さである。
ドン・マクリーンという歌手の歌にね、ゴッホを主人公にした「ヴィンセント」という美しい歌があってね、それがStarry, starry night. Paint your palette blue and gray.って始まるんだよね、と歌った途端、魔法のように左から右へ緑色のオーロラがさあっと刷かれて、二人とも驚いて茫然と見上げた。この前より綺麗だねえ。どうしよう、あの二人、もう寝てると思うけど、俺たちだけ見て喜んでいるのも可哀想だし。起こそうか。そうしようかと、りんさんが二人を起こしに行った。
オーロラがまた見られるならと、二人ともいそいそと起きて来て、あ、今度は右のほうに出て来たと4時30分までオーロラを仰ぎ続けた。
(写真*)猫髭のカメラは旧式の廉価版デジカメなので、 オーロラをバルブ開放で撮ることが出来ず、オーロラの写真のみ観光に来た旅の人の御厚意に寄る。
皆ポークやシー・フードを頼む。わたくしはラム肉のラック。アメリカのラム肉は、肉がたっぷり。ビールはこの前確認済みだから、皆おいしい。りんさんがチェリー・エールを頼む。味見させてもらうと、何とチェリーの香りのビールで、なかなか料理と会う。
結局食い切れなくて、またもやドギー・バック。その代わり、今回はデザートをどかっと頼んだ。これぞアメリカというチョコレート・ケーキBlack & Tan Brownies(訳すと「黒と褐色の小魔人」)5.50$に、ブラックベリーのクリュム・ブリュレ6.50$。中の君が楽しそうにクリュム・ブリュレの表面の砂糖をフォークでカチカチ割る。
帰宅して、三連荘の句会。お腹パンパンなので、りんさんハンドメイドの苔桃のお酒を飲みながら。酸味がなかなかイケル。
となるとつまみが欲しくなる。これまたりんさんとアラスカの仲間が作った、これは紫蘇でもち米を蒸したのを巻いたものをピクルスの汁に漬けたのだろうか。もちもちして苔桃の酸味とは違う紫蘇の酸味が相乗効果。
チェダー・チーズを買って来たので、余っているバジルと生ハムで巻く。わたくしはカマンベールが苦手なので、オーソドックスなチェダーかモッツァレラを生ハム、特にコッパという豚の首の生ハムで巻く。イタリア料理だが、パーティなどで季節の野菜を巻いて作ってあげるとアメリカ人も喜ぶよと言うと、目借時千鶴羽君が、今日初めて口を利いたというように、猫さんて凄過ぎると、エイリアンを見るような目で言う。何よ、その言外に「俳句以外は」というトンボのようなつぶらな目付きは。
実はわたくしの作る料理は、ほとんどが高齢の母のために工夫した介護料理なのだが、介護料理と言っても、栄養のバランスを考えてという発想はしない。食べることで生きている楽しさを味わえるというのが目的の介護料理である。今日はどんなおいしいものを作ってくれるのだろうと母の料理する背中を見て育った子どもは、もう一人では歩くことも覚束ない母から「コックさん、今日は何を作ってくれるの」と言われて、その季節の旬の幸から母の食欲をそそる創作料理を考えるのが介護料理ということになる。ただし、母は辛いのが苦手なので、バッファロー・ウイングはわたくしの酒のつまみである。
22:00を過ぎて、オーロラ観光御一行様到着。なんと、昨日はチェナ湖へオーロラを見に行ったそうである。マイナス40℃近かったんでないの。旅の人にも話を聞くと、あの寒さではカメラの動きが鈍くなるそうである。写真を見せてもらうと、おお、まさしく今日行ったチェナ湖ではないか。というのが冒頭の写真。
生憎と、この夜は晴れていたのに、オーロラは出なかった。3時ごろ観光客たちはダウンタウンのホテルへ戻って行った。大君、中の君が部屋に戻った後、りんさんと苔桃酒を飲みながら四方山話をしていて、4時ごろそろそろ寝ようかと、寝る前にテラスに出て満天の星を見上げたが、やはりオーロラは出ない。それにしても、本当に星が綺麗。北極のそばなので北斗七星が縦に現われ、柄杓の柄のところが掴めそうな近さである。
ドン・マクリーンという歌手の歌にね、ゴッホを主人公にした「ヴィンセント」という美しい歌があってね、それがStarry, starry night. Paint your palette blue and gray.って始まるんだよね、と歌った途端、魔法のように左から右へ緑色のオーロラがさあっと刷かれて、二人とも驚いて茫然と見上げた。この前より綺麗だねえ。どうしよう、あの二人、もう寝てると思うけど、俺たちだけ見て喜んでいるのも可哀想だし。起こそうか。そうしようかと、りんさんが二人を起こしに行った。
オーロラがまた見られるならと、二人ともいそいそと起きて来て、あ、今度は右のほうに出て来たと4時30分までオーロラを仰ぎ続けた。
(写真*)猫髭のカメラは旧式の廉価版デジカメなので、 オーロラをバルブ開放で撮ることが出来ず、オーロラの写真のみ観光に来た旅の人の御厚意に寄る。
【予告】
5 日目(木)犬橇。
6日目(金)オーロラ宴会。
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