2010-08-29

林田紀音夫全句集拾読130 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
130




野口 裕



綾とりの薄日の母子が消されゆく

綾とりの昨日へ帰る指ひらく

昭和四十六年、未発表句。綾とりの句は、「綾とりの母子に水の夜深くなる」(昭和四十七年「海程」、第二句集収録)、「綾とりのくらがりの子を残して死ぬ」(第二句集収録)、「綾とりの朱の弦強く子に渡る」(第二句集収録)、「綾とりの母子茫々と暗くなる」(第二句集収録)。

第二句集に記載されている年代区分が大まかなので、作句順の推定は難しいが、「くらがりの子を」が最初の作句例で、「薄日の母子」、「昨日へ帰る」、「母子に水の夜」、「朱の弦強く」が同時期、「母子茫々と」が最後の作句例になるかと思う。「昨日へ帰る」を残しても良かったのではないかと感じるが、「母」あるいは「子」という言葉を残しておきたいところが作者にはあったのだろう。

 

今気付いたのだが、昭和四十六年の作句量がえらく少ない。前年、前々年の未発表句が百十九句、百十句に対して、五十一句。次の年が、百三十一句。花曜に加入する前年の昭和四十八年が百二十七句となっている。この年に三和動燃から豊川鉄工へ転職し、そのことが影響しているかもしれない。

墓掘りとおなじ汚れの軍手はめる

昭和四十六年、未発表句となっているが、第二句集に同一句が存在する。この年あたりは、発表媒体が海程に限られているので、雑誌発表を経ずに第二句集へ収録した句がある。未発表句と雑誌収録句、雑誌収録句と句集収録句の比較に手間をとられるだろうから、未発表句特集収録句の比較は盲点になることが多くなるだろう。

少女より影のび壁の鬼となる

昭和四十六年、未発表句。この句の発展形と考えられる句は、「鬼の棲む三日月を見せ肩ぐるま」(昭和四十七年「海程」、第二句集収録)だが、釈然としない。未発表句の方が優れていると考えられるからだ。よくわからない。

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