2010-12-12

〔週俳11月の俳句を読む〕小林苑を 寒い日の散歩は足が速くなるけど

〔週俳11月の俳句を読む〕
小林苑を
寒い日の散歩は足が速くなるけど


11月の句を読めと言われて、あらためて見たら、たっぷりとある。スタスタ歩く。ときどき、立ち止まる。じっと見つめたりもする。また、スタスタ歩く。最後に、もう一度眺める。ところで、散歩のあとは温かいお茶が美味しい。摘まむものもあると嬉しい。さて、どの句を持って帰ろうか。



コンビニによらず白無花果を買ふ  彌榮浩樹

日常生活からちょっと外れる。それも白無花果の方へ。表記も含めコンビニと白無花果の質感の対比も面白い。作者の感性とこちらのがパッと合うとき、楽しい人だ。



眉描きて重たくなりし案山子かな  近 恵
橋の下で開く瞳孔秋気満つ  
秋天を端から剥がすための爪  

一句目。わかる、わかる。二句目。明るい場所から橋の下へ。「瞳孔」と言われて、オッ! 三句目。どう考えても女の爪。完璧だと立てたくなる爪。



姉が飼う
アルカイックな
雨蛙       久留島元

なみなみと
なンとみごとな
なめこじる   

割ち書きの効果はどうかというと。一句目。雨蛙がそこにいるのでよい。二句目。このバカバカしさも割ち書き故。



乾びたる飯粒布団より剥がす  山口優夢
ずしりとゼクシィ買ひてをんなは木枯へ  
オリオンや眼鏡のそばに人眠る  

一句目。「乾びたる」の大袈裟が技。二句目。「ずっしりと」まで言う効果を知りつくしてる。三句目。この作者らしさ溢れるというべきや。



恵比寿から代官山へ迷ふ秋  寺澤一雄
告白や月は地球を離れつつ
虫籠のなかに隠れて虫見えず

冷凍枝豆解凍に失敗す
食べられるところが抜ける衣被ぎ
糸瓜より来世は茄子に生まれたし
花も実も蕾もありぬ夕顔棚
今年またしやうが祭の演歌歌手
天の川からいましがた宇宙船
昔より小さくなつてカンナ燃ゆ
名月や県庁前にバス止まる
広間だが襖を入れて狭めたる

日常のなにもかもが、ちっとも変じゃないのに変。俳句的な日々をちょっぴり初老風に戯画化してみせる妙味。九句目。ときどき、こんなことも言う。



冬耕や水をゆたかに海知らず  山口都茂女
枯木には雪が咲くから泊まつてけ
定住と決めてたつぷりくわの葉茶

耕すと言うこと、「泊まつてけ」の温み、定住という覚悟と安心。豊かな暮らしがある。



「兎は逃げた」  矢野風狂子

兎が跳んで逃げる。追いかける。見る俳句。これは面白い。



彌榮浩樹 昼の鞄 10句  ≫読む
武藤紀子 ゲバラの忌 10句  ≫読む
柘植史子 鎌 鼬 10句  ≫読む
清水良郎 父の頭 10句  ≫読む
近 恵 赤丸 10句  ≫読む
久留島元 五十音図(抄) 10句  ≫読む
山口優夢 冬の一日 10句  ≫読む
寺澤一雄 秋 九十九句  ≫読む
山口都茂女 泊まつてけ 10句  ≫読む
〔投句作品〕
久乃代糸 肌ざわり ≫読む
富沢巧巳 魚の粗をしゃぶる会が詠む ≫読む
高橋透水 ぶらり・酉の市 ≫読む
矢野風狂子 兎は逃げた ≫読む
俳句飯  つくりばな ≫読む

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