2010-12-26

「新撰」「超新撰」世代ほぼ150人150句(上田信治選)

「新撰」「超新撰」世代ほぼ150人150句
(上田信治選)

2010年12月23日「『超新撰21』竟宴シンポジウム」配付資料より ≫縦組みはこちら

◆1過去志向=擬古典 ロマン主義 反時代性 「季語」が価値

1 初御空みづのあふみの揺るぎなし 明隅礼子 [天為]
2 波寄せて詩歌の国や大旦     大谷弘至 [古志]
3 一対の松のあはひの淑気かな   牛田修嗣 [狩]
4 花過の海老の素揚にさつとしほ  藤田哲史 [澤]
5 山を出てあやめの水となりにけり 庄田宏文 [天為]
6 噴水の向かうに近江ありにけり  谷 雄介 [THC]
7 夜通しの嵐のあとの子規忌かな 津川絵理子[南風
8 秋草や厨子王にぐる徒跣      高柳克弘 [鷹]
9 葛の屨(くつ)搾れば臭水(くさうづ)ぢやあと出て 高山れおな[豈]
10 摂待の寺の小振りの缶ジュース 中本真人 [山茶花]
11 とんぶりをすくふ金色の柄杓  五十嵐義知[天為]
12 鶏頭の隆々として晴れ渡る   甲斐由起子[天為]
13 ひんやりと手鞠に待たれをりにけり 阪西敦子 [円虹

14 くさはらを歩めば濡れて魂祭   下坂速穂 [屋根]
15 ゑのこぐさ小雨の粒をその中に 小川春休 [童子
澤]
16 さいかちや道に淋しき方ありぬ  本多 燐 [都市]
17 立春大吉川底を石動き出す     榊 倫代[天為]
18 山脈の鋭(と)きをばたばた凧のぼる 津久井健之[貂]
19 春の瀧眼を閉ぢて岩濡れてをり  高室有子 [白露]
20どこまでを白といふべき花卯木 立村霜衣 [河内野

21 味噌甕の色深みゆく穀雨かな  内村恭子 [天為]
22 天使みな筋肉隆し豊の秋 黒田はる江[はるもにあ]
23 日にまじるこがねのいろや酉の市 金原知典 [屋根]

◆2超越志向=強度重視 精神世界 「前衛」的

24 涎いま夢の枯野へ落ちゆけり   男波弘志 [里]
25 切株日日(にちにち)別の菌噴(きのこ)「楽しめ」と 関 悦史 [豈]
26 枯蟷螂人間をなつかしく見る   村上鞆彦 [南風]
27 冬の虹つま先はもう濡れている 佐藤成之 [小熊座]
28 白鳥定食いつまでも聲かがやくよ 田島健一 [炎環

29 福寿草飾りてヒマラヤは遠し  青山茂根 [銀化・他]
30 明日は半分乾く武具のきよらか清水かおり[木馬ぐるーぷ]
31 白ばらの咲けりわれらは窪地まで 小川楓子 [
海程]
32 卯の花腐しぬるき火傷のやうな唇 田中亜美 [海程]
33 山へとつづく葡萄畑を写経せむ  中村安伸 [豈]
34 とおく来し青黴乾酪(ブルーチーズ)の斜立ちや九堂夜想 [LOTUS]
35 鮮やかな原野遺骨に星のさざなみ 豊里友行 [海程

36 山霧といへど破船のあるごとし 鞠絵由布子[白桃]
37 富士壺の口寒月の照らしをり   相子智恵 [澤]
38 月魄(つきしろ)の透りて氷割れむとす  冨田拓也
39 塩素の水へ光は夏の意味で、まだ 佐藤文香 [里
他]
40 雉子鳴けりこの世すべての渋滞へ 宮崎斗士 [海程

41 泉に集まる傷つきやすき袋達 月野ぽぽな[海程

42 僕の手に僕の手で僕の手と書く 今泉康弘 [円錐]
43 馬の視野紋白蝶の生まれけり  大井さち子[鷹]
44 泳ぎ疲れて金塊を手放しぬ   堺谷真人 [豈
他]
45 立ち上がるときの悲しき巨人かな   曽根 毅
46 霊獣の四肢に肉球秋麗     池田瑠那 [澤]
47 さまざまな貝殻の飛ぶ野分かな 北川美美 [豈]
48 飛ぶものを見てゐる冬の佛かな 川口真理 [雁帛]
49 毬つけば男しづかに倒れけり 吉村毬子 [LOTUS]
50 白菜の逆光の首ならびけり     堀本裕樹
51 ふくろうの涎なりけり不凍港  岡村知昭 [狼]
52 天気雨いつか世界の終わりある 宇井十間 [豈

53 手の甲につきのひかりのおもさあり  まり

◆3表面性=ミニマリズム ただごと 遊戯性 「写生」

54 ハンガーにハンガーかけて十二月 相子智恵 [澤]
55 花柄を着て南極へ西行忌 ドゥーグル[芙蓉俳句会]
56 桜桃忌センサーライト寄れば点く 山根真矢 [鶴]
57 仏壇と電話の黒き簾かな   依光陽子 [屋根
他]
58 電線にあるくるくるとした部分 上田信治 [里
他]
59 日の抜けてペットボトルや冬休  藤田哲史 [澤]
60 歳晩やセキセイインコ空の色  加藤かな文[家]
61 鶴帰る滋賀銀行の灯りけり   彌榮浩樹 [銀化]
62 あじさいが郵便局を開きけり 小野裕三 [海程
他]
63 昼時の牛乳店と盆梅と    松本てふこ[童子]
64 をかしくてをかしくて風船は無理 辻村麻乃 [篠]
65 畝覆ふ黒きビニイルさみだれ鳴る 古谷空色 [澤]
66 人形の眉の上げ下げ夏来たる  望月 周 [百鳥]
67 閑古鳥グラタン皿の白さかな     小林鮎美
68 薔薇ピンクイエローのり子美容室   藤枝一実
69 箱庭の池で泳いでゐる魚      北川あい沙
70 空梅雨や向き合っているパイプ椅子 小倉喜郎 [船団
71 選曲を間違へてゐるプールかな    近 恵 [炎環]
72 ゆらゆらと金魚の糞やヘリ通過 山下つばさ[街

73 朧夜の夜間金庫よありがたう   喜多昭夫 [澤]
74 死ねば濁点生きていしかば大飯店 湊 圭史[バックストローク]
75 金亀子擲つ虚子の姿かな     山田露結 [銀化]
76 いろいろの蓋あいてゐるキャンプかな 齋藤朝比古[炎環]
77 晩夏光ビル側面を均等に     杉浦圭祐 [草樹]
78 西瓜食ひあけぼの色の皮残る   生駒大祐 [天為]
79 髪洗ふ途中で今日も目を瞑る  松尾清隆 [松の花]
80 秋水に指の先から触れてゆく  杉原祐之 [夏潮
他]
81 林檎タルト映画は悪の勝つてゐる   酒井俊祐
82 胡桃割るプエルトリコがいま朝に 塩見恵介 [船団]
83 芒野を最上階と思うかな     守谷茂泰 [海程]
84 缶切りの錆びた匂ひに雪が降る  関根かな [小熊座]
85 牛鍋に麩の飴色や割れば白    森下秋露 [澤]
86 初雪やリボン逃げ出すかたちして   野口る理
87 校門に棕櫚高くあり冬休     興梠 隆 [街]

◆4私性=ノーバディな私による「私」語り

88 蝸牛やごはん残さず人殺めず   小川軽舟 [鷹]
89 ヒーターの中にくるしい水の音    神野紗希
90 コンビニのおでんが好きで星きれい  神野紗希
91 空は晴れて自転車を磨く布はないのだ 山田耕司 [円錐]
92 傘の柄のつめたしと世にゐつづける 杉山久子 [藍生
]
93 箱振ればシリアル出づる寒さかな  榮 猿丸 [澤]
94 人身事故あり荻窪は雪降りをり 谷 雄介 [THC]
95 円山町に飛雪私はモンスター    柴田千晶 [街]
96 無花果をなまあたたかく食べにけり津川絵理子[南風
97 レジ打ち終る寸前アイスを持つて来る 北大路翼 [街]
98 焼き肉のあとの日暮れや夏休   山口優夢 [銀化]
99 風鈴や胃に広がりし胃の薬   篠崎央子 [未来図]
100 端居して二百年後もここにゐる  小沢麻結 [知音]
101梨を落とすよ見たいなら見てもいゝけど 外山一機 [鬣]
102冬の金魚家は安全だと思う        越智友亮
103窓から魂乗り出し五月の空気を落ちる 種田スガル
104散文的に茹ではうれん草とスパゲティ 久野雅樹 [天為]
105ぽつとある注射の跡や秋の暮 森賀まり [静かな場所
他]
106冷蔵庫まづは卵を並べけり    後閑達雄 [椋]
107おまへの倫理崩すためなら何度(なんぼ)でも車椅子奪ふぜ 御中 虫
108三寒四温鋏をさがしたのは昨日 二村典子 [船団]
109春雷のせゐ床に手をついたのは たかぎちようこ[藍生]
110春水へゆつくりしづむ鳥の糞   佐藤郁良 [銀化]
111たんぽぽに小さき虻ゐる頑張らう 南 十二国 [鷹]
112目高飼ふ妻の時給の上がりけり  矢口 晃 [銀化]
113麗かや生春巻きのみどり透く 矢野玲奈 [玉藻
他]
114我が腿のあたりまで跳ぶ蛙かな    江渡華子
115卯月浪黒板を打つように書く 森川大和 [いつき組]
116新宿のまつかな梅雨を歩きけりしなだしん[田
他]
117ロックフェスの大光源に夕立かな   浜 いぶき
118冷房やどこかが違ふ肖像画    馬場公江 [狩]
119水中花時間がくれば帰る人    辻内京子 [鷹]
120僕は吸盤人間誰にでも吸ひつく夏 林 雅樹 [澤]
121バス停留所ポール移動や山車出すため 今村豊 [澤
122貨車ちやいろみづいろちやいろ終戦日 藤 幹子 [炎環]
123鱗雲母子家庭から硬いごみ     瀬間陽子 [陸]
124台風の近づきすぎて笑ひさう  土肥あき子[鹿火屋]
125爽やかな空振りを積み重ねけり 西村麒麟 [古志]
126秋の虹団地のひとり顔出せり 中島憲武 [豆の木

127川底の小人となっていく夜寒  久留島 元 [船団]
128大根抜く遠くの塔を想ひつつ 岡田由季 [豆の木

129枯園の四隅投光器が定む   西川火尖 [炎環]
130ちゃんちゃんこ着せて日本の子であった 山澤香奈[いつき組]
131枯葉には光ののぞき穴がある 岡田佳奈 [春野]
132冬ざくら童話の終はり晴れわたる 宮本佳世乃[炎環]
133闘犬や頸動脈はもつと右   小早川忠義[童子]
134万国旗どさりと落つる日永かな 小林 檀 [俳句スクエア]
135産み終へてみればこの世は花ざか 鶴岡加苗 [狩]
136青春や酎ハイに浮くさくらんぼ 栗山 心 [都市]
137水のない水槽が好き ある日  高遠朱音
138霧が俺の肩抱き追憶せよという 阿部吉友 [吟遊]
139春風のふれゆく水を泪とも    日下野由季[海]
140昼過ぎの明るさかなし冬に入る 金原知典 [屋根]

◆5「    」(空項)=一回転した物語性・内面性

141人類に空爆のある雑煮かな    関 悦史 [豈]
142しやぼん玉雀映してこはれけり 杉山久子 [藍生
他]
143綿虫に平日の人どほりかな    高柳克弘 [鷹]
144道ばたは道をはげまし立葵    小川軽舟 [鷹]
145星がある 見てきた景色とは別に
佐藤文香 [里他]
146風花や木を植うるとて深き穴  浅生田圭史[古志]
147水澄むやあかき土よりほそき草 藤本夕衣 [晨
他]
148朝日から鳥の出てくる寒さかな 加藤かな文[家]
149ひなたなら鹿の形があてはまる  鴇田智哉 [雲]
150人参を並べておけば分かるなり  鴇田智哉 [雲]

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