亀戸天満宮 高橋透水
鷽替や賽銭弾く賽銭箱
鷽替に今年も替へぬ嘘のあり
鷽替へて少女にはかに大人びる
奉納の笛の音高く里神楽
笛の音にふふむ梅どち笑ふ梅
絵馬にある訂正の文字春を待つ
菅公の好む紅とて梅咲けり
枝垂梅天蓋にして豊国の碑
子虫来て梅の一片落としけり
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初心者の俳句 合原 宏
しんしんと雪の降る中職探し
二等兵古兵にしごかれ雪の夜
無法松祇園太鼓で龍を呼ぶ
髭振りて炬燵に近き油虫
元旦や詣でて貰う風邪と熱
子供来て我が墓撫でて寒の酒
お正月何が目出度い家無し子
羊羹に寸を測りて大家族
へらへらと笑う角には鼠捕り
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二色 すずきみのる
腐草蛍に路上の石は利鎌と化す
睦言の後の秋韻双耳峰
降る雪や出雲平野に鉄の杭
水村山郭白鳥が闇を引く
新玉の携帯メール受信中
道のへは春奇形魚のでてくる日
はブラシはつつんですてる紫もくれん
ほたるの夜ふたりでアニメぶんかろん
もみぢかつちるさいふに大きなるコイン
こがらしやこぼれた酒がゆかにまで
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極東 久乃代糸
元日の箸の先から年零る
水涸れて木の踝が現われゐる
白髪を黒髪にして紅葉狩
心太山を吸う根の入りみだる
ひよつとこの面つけてゐるきりぎりす
蝸牛の夜道はくちびるを使う
極東に紅葉且つ散る浪花節
雨がふる土から葱をつくる人
海千山千買い減らす冬の米
まだにある昨日の水に薄氷が
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稲妻 倉本たけし
端居してチリメンジャコに選るいろいろ
蟻地獄きのふもけふも無為にすぐ
先生と呼ばれ青島牌酒(チンタオビール)受く
白日傘黒い日傘と鉢合わせ
捩花や姉の手紙の濡れてつく
合歓のはな狐の嫁入り土手をゆく
とっぷりと日暮れて帰る夏木立
稲妻やコツと打ちわる生卵
待宵や魚一尾焼く夕炊ぎ
胃カメラに腹さぐられしそぞろ寒
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初鏡 真鍋修也
紅を引く三面の母初鏡
まだ慣れぬ着物着る日や初鏡
風呂上がり重なる姪や初鏡
初鏡三面鏡に三母かな
初鏡少し欠けたる古さかな
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ふくと汁 赤間学
どうせすぐゆく身でありしふくと汁
松に雪文字の小さな大辞典
オーロラの白熊沖に出てゆけり
けぶり立つ富士の頂初景色
海溝に浮きて大きな鯨かな
観音の固まってゐる福寿草
印画紙の像立ち上がる十二月
しかしまだ先は遠きか木々の雪
凍鶴は宇宙への旅行ったきり
冬苺廃鉱山の異人墓
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2011-01-30
テキスト版 197号投稿作品(高橋透水 合原宏 すずきみのる 久乃代糸 倉本たけし 真鍋修也 赤間学)
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