ふおんな春たち 十月知人
ていねいにつまそぎ落としつまを抱く
女優らのくちぶえはひらがなあげはちょう
おるがんのさばよみの国のアーチ
はっぽうのじゅふんうらぎる友はなし
よるはねるもなかのさなかのヘルメット
はるはんし四畳半襖の母の地図
あけていくポルノのさいてんオクトパス
●
土 筆 澤田和弥
ポンポンの籠に散りたる土筆かな
(※ポンポン:バイクのカブを指す遠州弁)
土筆摘む父と初めて知りにけり
土筆摘むとき母悲します父にあらず
さつと醤油土筆煮詰めてゐる無言
摘みて煮て食ふて土筆が糞となる
一本の土筆落ちをり父の跡
●
日出国 園田源二郎
野良犬の嘆息地表を温めり
人間傷み禽の眼曇り木々歪む
近未来魚眼レンズにたゆたへり
木魚割れ燈明猛り猫嗤ふ
人間の環の只中に居て骨軋む
賛美歌の音階狂ひて地下の春
御佛の腋下に宿る星数多
花々の不浄や獣の眼は闇し
祖母語る脈絡の無き地獄かな
かくれんぼ異形の佛の紛れをり
●
春はあけぼの 赤間学
御統の玉貫ゐて寒昴(みすまるのぎょくつらぬいてかんすばる)
寒鯉の曳きづる闇の深みかな
二・二六声変はりして失踪す
亀鳴くや海より出でし潜望鏡
大人てふ迷ひ子をりし遍路かな
江戸は庭園都市海に椿咲く
一筋の光となりし雪解川
春はあけぼの人類といふ獣をり
水道管枝分れして春の空
水門の曳き上げらるる鳥雲に
●
2011-03-27
テキスト版 投稿作品(十月知人 澤田和弥 園田源二郎 赤間学)
Posted by wh at 0:20 0 comments
Labels: 投句作品
投句作品 十月知人 ふおんな春たち
Posted by wh at 0:20 0 comments
Labels: 投句作品
投句作品 園田源二郎 日出国
Posted by wh at 0:20 0 comments
Labels: 投句作品
投句作品 赤間学 春はあけぼの
Posted by wh at 0:10 0 comments
Labels: 投句作品
2011-02-27
テキスト版 201号投稿作品(石川順一 真鍋修也 赤間学)
雪 中 石川順一
雪の中カートは白きテロに遭う
灰色のカートが雪の中でテロ
激走が雪の中では歩き出し
軽量のカートの脚に吹雪けり
真夜中に雪の落下の音を聞く
吹雪く時神の怒りが爆発し
軽量のカートに雪の重みかな
完全な神の怒りは雪の中
もし今が永遠なれば雪の中
吹雪く中神の怒りを知悉する
●
咳 真鍋修也
クリスマスイブや仲間の底話
仕事終へがらんと白き咳始め
食積やしばししばしの惑ひ箸
幾度目の入院なるや山眠る
白い影これが肺炎咳の本
延びにけりペースメーカー交換日
点滴にぽたり呟く若菜かな
人日や点滴一架客来る
病人の汁粉に餅なし鏡割り
双六や弄ばれる上り前
●
風 葬 赤間学
藁にほや農婦の奥の雲眩し
父のこゑありて新年明けにけり
海に石投げる工事や船うらら
鶏を潰しにゆくや冬の川
凍空へもっこの土を下しけり
津軽平野の凍てつゐて三四人
縄文人の骨の飢餓線冬銀河
ぼたん雪狼いまもゐるごとく
木の実張る全山いよよ風の中
草萌や大河は空に蛇行せり
●
Posted by wh at 0:03 0 comments
Labels: 投句作品
2011-01-30
投稿作品 赤間 学 ふくと汁

第197号の目次に戻る
Posted by wh at 0:10 0 comments
Labels: 投句作品
テキスト版 197号投稿作品(高橋透水 合原宏 すずきみのる 久乃代糸 倉本たけし 真鍋修也 赤間学)
亀戸天満宮 高橋透水
鷽替や賽銭弾く賽銭箱
鷽替に今年も替へぬ嘘のあり
鷽替へて少女にはかに大人びる
奉納の笛の音高く里神楽
笛の音にふふむ梅どち笑ふ梅
絵馬にある訂正の文字春を待つ
菅公の好む紅とて梅咲けり
枝垂梅天蓋にして豊国の碑
子虫来て梅の一片落としけり
●
初心者の俳句 合原 宏
しんしんと雪の降る中職探し
二等兵古兵にしごかれ雪の夜
無法松祇園太鼓で龍を呼ぶ
髭振りて炬燵に近き油虫
元旦や詣でて貰う風邪と熱
子供来て我が墓撫でて寒の酒
お正月何が目出度い家無し子
羊羹に寸を測りて大家族
へらへらと笑う角には鼠捕り
●
二色 すずきみのる
腐草蛍に路上の石は利鎌と化す
睦言の後の秋韻双耳峰
降る雪や出雲平野に鉄の杭
水村山郭白鳥が闇を引く
新玉の携帯メール受信中
道のへは春奇形魚のでてくる日
はブラシはつつんですてる紫もくれん
ほたるの夜ふたりでアニメぶんかろん
もみぢかつちるさいふに大きなるコイン
こがらしやこぼれた酒がゆかにまで
●
極東 久乃代糸
元日の箸の先から年零る
水涸れて木の踝が現われゐる
白髪を黒髪にして紅葉狩
心太山を吸う根の入りみだる
ひよつとこの面つけてゐるきりぎりす
蝸牛の夜道はくちびるを使う
極東に紅葉且つ散る浪花節
雨がふる土から葱をつくる人
海千山千買い減らす冬の米
まだにある昨日の水に薄氷が
●
稲妻 倉本たけし
端居してチリメンジャコに選るいろいろ
蟻地獄きのふもけふも無為にすぐ
先生と呼ばれ青島牌酒(チンタオビール)受く
白日傘黒い日傘と鉢合わせ
捩花や姉の手紙の濡れてつく
合歓のはな狐の嫁入り土手をゆく
とっぷりと日暮れて帰る夏木立
稲妻やコツと打ちわる生卵
待宵や魚一尾焼く夕炊ぎ
胃カメラに腹さぐられしそぞろ寒
●
初鏡 真鍋修也
紅を引く三面の母初鏡
まだ慣れぬ着物着る日や初鏡
風呂上がり重なる姪や初鏡
初鏡三面鏡に三母かな
初鏡少し欠けたる古さかな
●
ふくと汁 赤間学
どうせすぐゆく身でありしふくと汁
松に雪文字の小さな大辞典
オーロラの白熊沖に出てゆけり
けぶり立つ富士の頂初景色
海溝に浮きて大きな鯨かな
観音の固まってゐる福寿草
印画紙の像立ち上がる十二月
しかしまだ先は遠きか木々の雪
凍鶴は宇宙への旅行ったきり
冬苺廃鉱山の異人墓
●
Posted by wh at 0:10 0 comments
Labels: 投句作品
投稿作品 高橋透水 亀戸天満宮

第197号の目次に戻る
Posted by wh at 0:10 0 comments
Labels: 投句作品
投稿作品 すずきみのる 二色

第197号の目次に戻る
Posted by wh at 0:10 0 comments
Labels: 投句作品
投稿作品 合原 宏 初心者の俳句
Posted by wh at 0:10 0 comments
Labels: 投句作品
投稿作品 倉本たけし 稲妻
Posted by wh at 0:10 0 comments
Labels: 投句作品
2010-12-19
投稿作品 十月知人 聖家族
Posted by wh at 0:08 0 comments
Labels: 投句作品
テキスト版 投稿作品 灌木 仕様書
仕様書 灌木
引き継ぎし椅子を据ゑたる春野かな
土塁址見えて焼野に気づきけり
空壜が泥水溜める青野かな
利腕をひろげ夏野に抱かれけり
仕様書を捨て立ち上る秋野かな
電気柵錆びて花野に学びけり
雨筋が透きを埋める枯野かな
生き急ぐ息を冬野に鎮めたる
●
Posted by wh at 0:08 0 comments
Labels: 投句作品
テキスト版 投稿作品 十月知人 聖家族
聖家族 十月知人
隙間風河馬にこわされ歌になる
冬の蝶ねぐらは昨日の奥の方
砂時計の砂掘るうちは少女ね
双頭の蛇はっきりと兄と姉
さびるだけさびて鎖は父の土地
針刺しの針を数える誕生日
白熊の剥製寄り切る謎解ける
鼓笛隊見失うとき国境は冬
文旦の帝王のまま年を越す
●
Posted by wh at 0:08 0 comments
Labels: 投句作品