2011-01-16

〔祐天寺写真館・メキシコ篇〕マメイの壁 長谷川裕

〔祐天寺写真館・メキシコ篇〕
マメイの壁……長谷川裕

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メキシコシティ・コヨアカン地区のとあるレストランから。鉄格子の外に見えるのはお金持ちのお宅だが、塗り替えられたばかりの壁の色に注目。「マメイ」色である。マメイとは果物の名で、果肉がこの色をしている。スプーンで掬って食う。美味。

このマメイ色にかぎらず、メキシコ人は外壁をショッキング・ピンクや青などのパステルカラーで塗るのが好きだ。で、これがなかなか渋い。明るさのなかに仄暗さがあり、味がある。かくも派手なのにディズニーランドまがい──いや、「まがい」はディズニーランドのほうだったな──に陥らないのは、手作業で塗った下地の凹凸が陰影を作り出し、微妙なニュアンスを醸し出しているからだろう。ひとつとして同じもののない鉄格子やランプの金具は、鍛冶屋がその家に合わせて作ってくれるし、分厚い木の扉もそう。手作業の労賃がおそろしく低いがゆえに可能なことなのだ。

では、こうした風合いが富裕層だけのものかというと、そうでもない。地方の貧しい農家や、拾ってきたトタン板で建てられたスラムのあばら屋にも、どこか同じような雰囲気が備わる。うまく説明しがたいのだが、不完全さの許容、いや、不完全の美とでもいうべきか。「完璧」がつくりだしてしまう虚無を拒絶している。


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