2011-02-20

林田紀音夫全句集拾読153 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
153





野口 裕



さくら綻びて冥府の夕まぐれ

天辺に鬱々とさくらのその十字架

花びらのさくらの空の悪積もる

青空のさくらの下を死の刻過ぎ

ほつほつとさくら灯る神隠し

さくらへ降る日のすこやかな水滅び

茫々とさくらの夜空ひとりの喪

老残の鬱とさくらの夜のとばり

昭和五十年、未発表句。六句連続して書き、何句か離れて残り二句が書かれている。「桜」でなく、「櫻」でもなく、「さくら」にこだわっていることは明らか。これだけ書いて、昭和五十年から昭和五十五年までの発表句にさくらの句なし。

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