2011-02-27

〔祐天寺写真館・メキシコ篇〕黒猫

〔祐天寺写真館・メキシコ篇〕
黒猫

長谷川裕

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とにかくどろぼうが多いです。

高級住宅地にある大邸宅はまず例外なく、二度や三度はどろぼうに入られていると思っていい。むしろ集合住宅のほうが安全ですが、お金持ちは大邸宅を構えなければ沽券にかかわるので、覚悟のうえで大邸宅に住むんです。

お金持ちであることを隠そうとするお金持ちはいません。俺は金持ちだ! 文句あるか、貧乏人め! さあ、いつでもやってこいというノリなんです。

そんなわけで大邸宅は高い塀に鉄条網をめぐらし、おそろしく分厚い門を構える。当然、警報装置も設置している。そして、たいてい銃器で武装したガードマンを雇っています。でもだめなんです。そのガードマンが情報を漏らし、合鍵を作ってどろぼう仲間を引き入れたりするから。

また、女中さんには嫌われないようにしないといけない。小銭をちょろまかしたとか、冷蔵庫の中のものを盗んだなどと、細かなことでいちいち叱ってはいけません。愛人にそそのかされ、どろぼうの手引きをしたりなんてのはよくあることです。

まあ、大邸宅に住んでいらっしゃる方々は、とてつもなく儲けている合法的な大どろぼうというケースが多いので、そんなことは多少の必要経費と割りきっていらっしゃるようです。

今日もどろぼう猫がするりと鉄条網をすり抜けていきます。



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