2011-04-10

〔週俳3月の俳句を読む〕岡田由季 ユーモアと矜恃

〔週俳3月の俳句を読む〕
ユーモアと矜恃
岡田由季


今回の震災で、あらためて俳句は非常時には何の役にも立たないと感じた。しかし平時の生活に俳句が役に立っていたかというと、そうでもない。だからまあ仕方ないと思う。被災地にいない者は、経済のことも考え、なるべく普段通りの生活を送る方がよいという考えに概ね賛成なので、その普段通りの生活のなかで俳句も読んだり書いたりしていくしかないと思う。けれども今自分の中で、普段通りの生活というのがどんなものだったか、曖昧になってきてしまっているのも事実だ。


ああ暗い煮詰まっているぎゅうとねぎ  金原まさ子

独特のリズムによるスピード感にせかされてあっという間に10句を読んでしまい、「さてタイトルの牛と葱は?」と振り返ると、ここにあった。タイトルがなければ葱が「ぎゅうと」煮詰まっているようにも見える。思いきった口語表現や、食材の視点から詠んだ発想の面白さに目が行くが、その影に、綿密な仕掛けがある、というよりもむしろ読者をからかっているという方が近いかもしれない。しかし、からかわれたとしても嫌な気分ではない。映画のストーリーとは直接関係ないカメオ出演を発見し楽しむような気分である。


目が青いだけか変身春梟   金原まさ子

梟を春の梟と感じた、それは梟の目が青かったから、という内容はそれだけでも詩的で美しく共感できる。しかしそれをそのまま美しく書かず、「変身春梟」などと子供向けのヒーローものの台詞のように表現しているところに、ユーモアと矜持を感じた。


シャボン玉吹くよ利き手を直されて
  望月 周

子供が左利きを右利きになおされているのだろうが、本人はきっとそれが不服だ。何故自然に逆らい皆に合わせなければならないのか。もしかしたら人生で最初に感じた不条理かもしれない。しかし反論したり逆らうすべもまだ持っていない。もやもやした気持ちがシャボン玉となって漂う。



第202号 2011年3月6日
淡海うたひ とことん 10句 ≫読む
第204号 2011年3月20日
金原まさ子 牛と葱 10句 ≫読む
今井肖子 祈り 10句 ≫読む
九堂夜想 レム 10句 ≫読む
第205号 2011年3月27日
望月 周 白湯 10句 ≫読む
投句作品
澤田和弥 土筆 ≫読む
十月知人 ふおんな春たち ≫読む
園田源二郎 日出国 ≫読む
赤間 学 春はあけぼの ≫読む

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