2011-05-22

商店街放浪記43 大阪 千林商店街(1) 小池康生

商店街放浪記43
大阪 千林商店街(1)

小池康生


大阪の商店街の代名詞とも言えるであろう。

関西のテレビ番組で、“おばちゃんアンケート”を取るとき、この商店街が使われることが多い。

司会者が「千林のおばちゃん100人に聞きました」、そう言うというとスタジオの出演者も、ギャラリーも「ぷっ」と吹くのである。きっとテレビの前の人たちもそうなのだろう。

そんなイメージなのだ、千林商店街は。

放浪記連載当初から、この商店街は早々に書かねばならぬと思い、意気込んで訪れたことがある。

何人かの仲間から、「千林、早(は)よ書いてな」と言われていたこともあったからだ。

しかし、実際に長い商店街を何往復かしたが、わたしには書くべきことがなかった。つるつるの、のんべんだらりんの商店街に見え、取り付く島がなかった。

そして、今回、路地裏荒縄会のメンバーと行ったのだ。

平日の夕方、大のおとな五人で訪れた。荒縄初登場の塗り壁さんも参加だ。残念なことに赤レンガさんが欠席、なにやら大変なことが起こっている模様。皆の冒頭の挨拶は、その心配から始まった。

そういうはじまりではあったが、赤レンガさんいは申し訳ないが、この日は楽しかった。

商店街で見ず知らずの人たちから、貴重な話を聞けたのだ。

しかし、どこで誰に話を聞いたのか覚えていない。べろべろに酔っていたからだ。

わたしなど、千林に行く前から酔っていたのだ。

禁治産者のわたしがべろべろなのは仕方ないとしても、ジェトルマンの筆ペンさんや九条DXまでべろべろで登場した。

仕方ない。大のおとなは時に早い時間からべろべろになるのだ。

何年か前、つるつるに見えた商店街が、今度は、ぎざぎざでこぼこに見えてくる。

わたしたちべろべろ酔っぱらい集団に話しかけてくれた人のおかげだ。

筆ペンさんの後日のメールによると、

『練り羊羹色の鯨の刺身を食べている時、思いがけず卓越したインフォーマントに出合え、商店街の裏側まで垣間見ることができました。この「垣間見る」という偶有性(contingency)が当会の持ち味とつくづく感じ入りました』

インテリは書くことが違う。

おでこに鞄の紐を引っ掛けながら、商店街を歩いていた酔っぱらいとは思えぬ。

このcontingencyたらいうものを説明すると────

千林商店街を今も大人気とわたしたちは感じているが、昭和37、8年はこんなものではなかったらしい。溢れるほど人が行き交い、商店街に店を出す人たちは次々成金になり、界隈に家を建てた。

千林はスーパーの『ダイエー』発祥の地、続いて『ニチイ』も生れた。

当時、この京阪沿線にめぼしい繁華街がなかったのだ。京阪とは大阪淀屋橋と京都の四条三条方面を繋げる路線である。

大阪側に大きな街がなく、今では守口、寝屋川、香里園などがあるが、昔は電車に乗って買い物に来ても“お得な町”として、千林があったのだ。

千林の隣りの「滝井」に色町があったことも集客につながった。

面白い。袖振りあうご縁の酔っぱらいさんに、こんな話を聞かせてもらえるのだ。別の酔客がこういう。

「最近は、客も少ない。店がびっしりあるように見えるけど、安くで店を貸している。しかし、わしはな、アドバイスしてやりたいんや。家賃安いから言うて、それですまへんねんから」

商店街好きのわたしたちは、店を探している人間に見えたのだろうか。

筆ペンさんは金持ちに見えるし、九条DXはいかついし、わたしはカッコイイし、ハハハハ、酔ってるぞ、絶好調・・・。おじさんの話は続く。

「家賃のほかに、商店街の会費があるやろ。それとアーケードの改修が三度目や、その支払いも馬鹿にならん。それに地面の舗装もそれぞれの店の負担になんねん。間口の広さや店の敷地面積で負担は割り当てられるや。家賃だけやないねん」

きっと、九条DXが、人生の巻き返しに店を探していると思われているのだ。

彼は、金ラメのスーツを着ていると人が避ける、ガタイと顔つきである。だから、わたしたちもイジメ甲斐があるのだ。

「権利金もえらい安なってるけど、たとえ750万円になったとしても、出るときは250万しか返ってけえへん。昔はもっと高かったけれど、返ってくる金との差し引きは結局は同じことや。家賃も権利金も安いから、遠くから店を出しに来る人もいてるけど、すぐに撤退するんや。何千万貯めたからって、そんなもんで、簡単にはじめたらアカン・・・・」

路地裏肉食系の九条DXは真剣に聞き入っている。本気かお前・・・。

大阪を代表する商店街の現実を知り、わたしは、逆にこの商店街が好きになっていく。日本全体が大変なのである。この商店街は今の日本人そのものではないか。もっと飲もう、もっと歩こうではないか。

なんか、今日はみんなヘンやぞ。

鮑うごく心が這つてゆくやうに  康生

(続く)

3 コメント:

匿名 さんのコメント...

「大阪を代表する商店街」

興味津々です。

ぺんぺん草 さんのコメント...

暫く登場無かったので心配してたんやが、今回はまた絶好調でんな。
次回も楽しみにしてまっせ。

匿名 さんのコメント...

匿名さん、ぺんぺん草さん、
コメント、ありがとうございます。
一週置いてまた、べろべろのへろへろで登場します。

小池康生