【週俳5月の俳句を読む】
チャレンジャーか?おバカさんか?
山田露結
フクシマ忌小壜のこれガンジスの水 白井健介
歳時記には「広島忌」、「長崎忌」という意味不明の季語もあるから「福島忌」を思いつく人もいるだろうなあと。意味不明というのは、広島も長崎も死んだわけではないのに「忌」の字を当てる不可解さ(もっとも原爆で亡くなった犠牲者に対する「忌」の意味があるのかもしれないが)に対してそう思うのであって、ましてや「原爆忌」となると日本語として、あるいは言葉としてどうなんだろうと考え込んでしまうところがある。
掲句においては、いまだ原発事故収拾の目度がまったく立っていない現時点においての「フクシマ忌」である。また「フクシマ忌」は10句作品のタイトルにもなっているから、否応なく目に飛び込んでくる。この言葉を使うことの是非はともかく、そのインパクトのせいで初読の段階では句意は吹き飛んでしまう。とりあえず、作者の意図が被災者に対する「励まし」を目的に近頃盛んに詠まれているいわゆる「震災俳句」とはまったく異なる方向を向いているであろうことは推測出来る。
「フクシマ」とカタカナ表記にしたのは作者が意図的に実際の福島と距離を置こうとしたためだろうか。また、小壜に入った聖なる川ガンジスの水は、事故後海に流出した放射能汚染水を想起させるために揶揄的に使われているのだろか。読み様によっては掲句を過度に原発に依存してきた現代社会に対する風刺、あるいは警告として捉えることも不可能ではない。
いずれにしても、このデリケートな時期にあえてこの言葉を使った作者はよほどのチャレンジャーなのか、それとも無神経で能天気なだけのタダのおバカさんなのか、私にはにわかに判断することが出来ない。おそらく後者だろうが。
第210号 2011年5月1日
■今村 豊 渡り廊下 10句 ≫読む
第211号 2011年5月8日
■白井健介 フクシマ忌 10句 ≫読む
第212号 2011年5月15日
■花尻万博 南紀 10句 ≫読む
第213号 2011年5月22日
■高崎義邦 ノンジャンル 10句 ≫読む
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2011-06-05
【週俳5月の俳句を読む】 山田露結
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