2011-06-12

【週俳5月の俳句を読む】興梠 隆

【週俳5月の俳句を読む】
ささやかながらタブー

興梠 隆



ぶらんこにきて上履きと気づきけり  今村 豊

ぶらんこを懸命に漕ぐ。振幅がどんどん大きくなって空が近づいてくる。爽快さと同時に何となく不安もこみ上げてきて、空を見ているようで実は前方に伸ばす自分の足ばかり見つめていたりする。空の色とは違う爪先の青いラバーの色を見て気付く。しまった、上履きのままだ、と。
ささやかながらタブーを犯した興奮と、地を蹴って浮遊する解放感とがないまぜになる。
余談だが、大学の頃、いつも白一色の上履きを普段履きに使っている女の先輩がサークルにいた。煙草片手にまっ白な上履きが街中を闊歩する。センター街でも歌舞伎町の飲み屋でも。あんな堂々たる上履きは見たことがない。
 


第210号 2011年5月1日
今村 豊 渡り廊下 10句 ≫読む
第211号 2011年5月8日
白井健介 フクシマ忌 10句 ≫読む
第212号 2011年5月15日
花尻万博 南紀 10句 ≫読む
第213号 2011年5月22日
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