林田紀音夫全句集拾読 173
野口 裕
頬杖にしみじみ滲むウイスキー
昭和五十一年、未発表句。第二句集『幻燈』に「幽界へ氷片のこすウイスキー」があり、全句集の編者である福田基氏は、若干酒の場の軽口ではあろうが、「先生、これでいきましょう」と今後の方向を提案した。そのようなニュアンスで、あとがきが綴られている。
そこでこの未発表句だが、余韻を曳いて、「幽界へ…」よりも良いように私には見える。「滲む」のは、頬杖をついている自身の内部へ、であろう。ウイスキーが、内界を覗き込む絶妙の道具立てとなっている。
発表句への展開がないのは、すでに「幽界へ…」を句集に発表済みであることが影響しているか。もったいない気もする。
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大和路は四通八達蟻の道
昭和五十一年、未発表句。堂々たる有機定型句。たまにはこんな句も作るよ、という余裕を感じるせいか、路と道の重なりもそれほど気にならない。紀音夫が昭和四十九年から参加した「花曜」では、奈良の句会も頻繁に行われていた。そことのつながりを感じさせる。
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2011-07-17
林田紀音夫全句集拾読173 野口裕
Posted by wh at 0:05
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