林田紀音夫全句集拾読 174
野口 裕
夢よりも濃く優しくて鬼瓦
昭和五十一年、未発表句。鬼瓦で意表を突こうという下心なしに句ができあがっている。幼年時の夢に見た鬼瓦と、初老に達した現在に見る鬼瓦とを比較するような雰囲気がある。
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天道虫翔つ親指を登りつめ
昭和五十一年、未発表句。天道虫の句が時折出てくる。「てんと虫一兵われの死なざりし」(安住敦)を意識しての句か。そんな気がしてきた。
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晴れた死角捉えテニスの球大粒
昭和五十一年、未発表句。「晴れた死角」を、どう読めばよいのだろうか。とりあえず、晴れ渡ったテニスコートの、ボールが行きっこないと考えていた一角としておこう。そこへボールが飛んだ。思わぬことに、ボールは異様に大きく見えた。そんなところだろうか。「大粒」が妙にユーモアを湛えている。
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2011-07-24
林田紀音夫全句集拾読174 野口裕
Posted by wh at 0:03
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