林田紀音夫全句集拾読 175
野口 裕
激忙の爪半月も薄日なた
昭和五十一年、未発表句。忙しいと言えば言うほど、人は忙しいとは思ってくれない、という法則を知っていながらつい言ってしまうことがある。激忙は思わず書いてしまった言葉だろう。ここで初出。発表句には出てこない。
爪半月は、発表句の方に出てくる。「爪の半月濃く幼くて水遊び」(昭和五十一年、「海程」)、「爪半月なくて行きあう護摩けむり」(昭和五十五年、「花曜」)。後句は、第二句集以後の収穫の一つに数えることができる。
●
雨だれの夜昼なくて針に糸
昭和五十一年、未発表句。小止みなく降り続く雨。窓から室内に目をやると、やりかけの針仕事でもあるのか、針と糸が置かれている。ごく普通の光景に、確かな生の一こまがある。だが、あまりにも平凡に映るので、自選の段階で拾い上げるのは難しいかも知れない。
●
2011-07-31
林田紀音夫全句集拾読175
Posted by wh at 0:05
Labels: 野口裕, 林田紀音夫, 林田紀音夫全句集拾読
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿