2011-07-03

〔週俳6月の俳句を読む〕中西夕紀

〔週俳6月の俳句を読む〕
地面で育っていくのだ

中西夕紀


土踏んで子雀育つ梅雨晴間   村上鞆彦

最近我が家のまわりでも雀を見なくなったが、子供の頃読んだ絵本では「雀のお宿」といえば竹林で、実際辞書で調べてみると、竹林で雀の群れが繁殖するとあるから、私の住んでいる町田も、山に入れば、あるいは竹林でまだ雀の群れをみることもできるのかも知れない。

最近雀の子を見たのは横浜の三渓園の池端で、30羽ぐらいの小雀の群れを見たのだが、まことに可愛らしかった。巣立ちといえば飛ぶという感覚であったが、子雀は固まって、あっちへちょこちょこ、こっちへちょこちょこ、といった具合に固まりで移動を繰り返していた。中の一羽がこけたり、前に歩く小雀にぶつかったり、追い越したりと子供はどれも似たり寄ったりで、その愛くるしさにしばらく見入ってしまったのだった。

「土踏んで子雀育つ」という断定的な表現がこの句の良さである。雀たちは、このように地面で育っていくのだ。そしてこの群れのまま成鳥になり、行動を共にし、そしてやがて死んでいくのだろう。成鳥になる間にもだんだん数は減っていくのだろうけれど、梅雨の晴れ間の光景として、逞しい生命の活動を描いている。作者の子雀への愛着と観察が発揮されている句である。


第215号 2011年6月5日
生駒大祐 しらたま 10句 ≫読む
第217号2011年6月19日
村上鞆彦 海を見に 10句 ≫読む

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