2011-08-14

〔10句競作を読む〕久保山敦子

〔10句競作を読む〕 みごとな着地  久保山敦子


造られて公園となるチューリップ  村越 敦

「~して~となる」というのはひとつの型だが、読んだ印象がちょっと不思議。これは取り合わせの句だろうか。しかし「公園」と「チューリップ」というところに意外性は少ない。

まず「造られて」と「公園になる」に意表をつかれる。「公園」の部分をいろんな建造物(マンションとか、鉄橋とか)に置き換えてみると、「公園」をもってきた面白さにかなうものはなかなか見当たらない。

「造られて」の以前の光景はどんなだったろう。山を崩したのか、河川敷を均したのか、遺跡を整備したのか、いずれにしても自然に手を入れたことには違いない。造られた公園はもとの土地の記憶を人々から消していく。

幾何学的に設計された公園に、きっちりと色分けされて植えられたチューリップがあざやかだ。

上五と中七のあいだにひとひねり、それをうけて下五でまたひとひねり。ひねりが二回も入って、みごとに着地をきめた快感が読後に残る。


薔薇を見るあなたが薔薇でない幸せ  田島健一

何十年かぶりに「星の王子さま」を読んだ。まだ子どもだった王子さまにとって、だいじに面倒を見つつも持て余し気味だった花のことが、この句を読んで思い出されたのだ。小学生の頃の夏休みの課題図書だったのか、与えられて読んだ記憶ではたいして引き込まれることはなかった。王子さまといっしょで、子どもには「愛すること」なんてわからなくて当然だったのかもしれない。読書感想文は書けず仕舞いだった。

さてこの句、「きみが薔薇でなくてよかったよ」と言われているのだろうか。いやいや、そんなことは言えないから、薔薇を見ながら恋人の手に触れつつ、「きみでよかった」と心の中でつぶやいているのかも。


週刊俳句「10句競作」第1回
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