林田紀音夫全句集拾読 181
野口 裕
昭和五十一年は、他の年と比較して句の量が多い。まだ三頁近く余している。
儚く暮れ猫で生き犬に死ぬ
昭和五十一年、未発表句。猫と犬はわかりやすい比喩。ただ、作者の伝記的な事実と合わないような気もする。第三者の生涯に対する感慨か。
行く水に人音からむ神無月
盃に眼鏡くもらす神無月
昭和五十一年、未発表句。神無月が、紀音夫には珍しい季語。
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剃刀に寸刻霧の音通る
昭和五十一年、未発表句。使いようによっては凶器となる日常の道具。平穏無事にその道具を使っていても、道具の発する音(髭剃りの音か)が惨事を連想させ、かすかな不安感が、霧の音のように耳元を通り過ぎてゆく。
名句。だが、未発表句。いかなる事情があったのか。
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2011-09-11
林田紀音夫全句集拾読181 野口裕
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