〔週俳8月の俳句を読む〕
風はもうすっかり
金子 敦
とりあへずあをい夏空折り紙に 湾 夕彦「蒟蒻笑ふ」
保育園の昼寝の時間って、長過ぎると思う。みんなはまだ眠ってるけど、僕はもう目が覚めちゃった。道具箱の中に入っている折紙のことが気になって。今朝、澄み切った青空を僕が切り取って作ったんだ。そっと道具箱の中に入れてきたけど、まだ消えずに残っているかな。きれいな青い色が褪せたりしていないかな。みんなが目が覚めたら、その折紙で紙飛行機を作って遊ぶんだ!
ひとつかみ草落ちてをり盆の路 陽美保子「水差し」
おばあちゃんの家に続く細い道は、木や草がぼうぼうに茂っていて、昼間でも薄暗い。その道の上に、ひとつかみの草が風に吹かれていた。なんだか薬草みたいな色。大トトロのために薬草を摘んだ小トトロが、それを運ぶ途中でうっかり落としていったのかな。落ちていたのはほんの少しだから、残りの薬草は無事に届けられたような気がする。薬草を飲んだ大トトロが、早くよくなりますように。大トトロが元気になったら、腹の上で昼寝したいな。
蚰蜒の一部分なり落ちてゐる 奥坂まや「一部分」
暑い暑い午後。コンビニまでアイスを買いに行く途中で、舗装道路に何か動いているものを発見。どうやら、小さい蚰蜒のよう。尻尾の一部分だけが、まるで出口を探すかのようにもぞもぞ這いずりまわっていた。僕は、アイスを買うのも忘れて、真上からじっと覗き込んでいた。すると、僕のおでこから大粒の汗がぽとりと落ちて、その蚰蜒に跳ね返った。「ぴちゃん」と小さな音を立てて。
水棹もて突ける巌や船遊 前北かおる「蕨餅」
今日、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に、初めて船遊びに行った。夕食を食べ終わって、船遊びのことを絵日記に書いているところ。川は水色のクレヨン、船は黄色のクレヨンで。船頭さんが、水棹で大きな岩を突いた時、「こつん」って音がして、それが青空に響き渡るような気がした。もしかたら、今夜の夢の中でも、「こつん」って音を聞くことが出来るかな。
水漬きたるものより秋の立ちにけり 藺草慶子「秋意」
いつも遊びに行く公園には、大きな木と小さな池がある。大きな木の枝は、どれもだらんと垂れ下がっている。今年の夏はとても暑かったから、夏ばてしてしまったのかな。その中の一枝は、池のはじっこに浸かっていて、まるで水を吸い上げているみたい。水に浸かった枝はとても涼しそうだから、夏ばてもすぐに回復するような気がする。ほら、吹いて来る風はもうすっかり秋の気配。
第224号2011年8月7日
2011-09-04
〔週俳8月の俳句を読む〕金子 敦
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