2011-10-16

かまちよしろう20句を読む 近恵

かまちよしろう20句を読む
恥ずかしそげで淋しそげ

近 恵


いつもの飲み屋に行くと、馴染みの顔触れが明後日誕生日というヤツを祝っていた。あのぉ、自分、昨日誕生日だったんス…となんだか言い出すこともできずにいる。そういや前に「誕生日いつ?」って聞かれたよなあ。あん時もヤツがいて、じゃあ一緒に祝ってもらうかーなんて話もでて、そっか、今年は祝ってもらえるんだとちょっと嬉しかったんだけど、やっぱ忘れられちゃったんだなあ。

忘れられてしまう自分がなんだか恥ずかしい。誰か思い出してくれたらいいのにな。自分もここに生きているんだけどなあ。。。昨日は田舎のオフクロが電話をくれて、ボケてきた親爺の話ばかりしてたっけ。今頃は紅葉が綺麗だろう。もうちょっとしたら冬の仕度だなあ。田舎、帰ろうかなあ…

  手前生国は風吹かぬ土手のスカンポです   かまちよしろう

  夕暮れは紫陽花薄く息を吐き
  ちょっと待てそこにあるのはオレの過去
  星降る降る野淋しくなんかない野
  見上げれば星がみぁあみぁあ哭いている

かまちんさんの句は恥ずかしそげで淋しそげだ。

詠まれている内容、選ばれたアイテムや言葉もどこかちょっと恥ずかしげだ。自分の存在を知っていてほしいけれど、自分を見て見てとは言えない。一人でいるのは淋しいけれど、だから誰かに一緒にいようよとは言えない。けど、オレ、ここにいるんだよね、的なニュアンス。

生きていることは淋しくて恥ずかしいこと。いいことばかりでもなくて、まあ所詮自分の人生なんてそんなもん。けど、それでもまあいいか、他の生き方とか知らないし。。。そんなようなのが透けて見えてくる気がする。

個人的にこういう感覚は、好きとか嫌いとかの前に自分と近くてマイってしまう。けれど根源に迫ってくるようなことをなんだか力の抜けた言葉で詠まれてしまうと、そうなんだよねーとしか言いようがない。そんな素直な気持ちにもさせてくれるのもかまちんさんの俳句の魅力だと感じている。

(もっとも、20句を選んだ天気さんの好みも大きく反映されている訳で、そのあたり、天気さんも似たようなことを感じながら生きている人なのではないかとの疑いをもってしまう)


そんな中、異色の一句。これは秋田音頭のリズムを彷彿させる。『コラ、秋田名物八森ハタハタ大館曲げわっぱ アーソレソレ』みたいな。

  むげえの雑貨屋高橋商店おやじのエプロンスリキレだあ

いいなあ、明るくってお茶目で。もし句会でこの句に遭遇してたら、迷いなくとっちゃうだろうな。


かまちよしろう20句

0 comments: