2011-10-16

かまちよしろう二〇句 テキスト

かまちよしろう二〇句 西原天気・謹撰

望郷はもう死語ですか皆の衆
はにかんでやがて淋しき風信子
跨線橋一本の土筆になっている男
手前生国は風吹かぬ土手のスカンポです
肩こらぬ亀の泳ぎや青葉池
日盛りや紙魚より薄き影法師
夕暮れは紫陽花薄く息を吐き
扇風機ぶーん山崎ハコの夏
万緑はいろはにほへと観音堂
ちょっと待てそこにあるのはオレの過去
星降る降る野淋しくなんかない野
寧日や泡の少ない黒ビール
お茶碗を父と名付けりゃ割れにけり
見上げれば星がみぁあみぁあ哭いている
凍空にえくぼのありし帰宅かな
正月や遠路はろばろ来た帽子
裕次郎ルリ子と夜汽車僕の春
中野区沼袋三丁目小梶様方僕の春
むげえの雑貨屋高橋商店おやじのエプロンスリキレだあ
大福の隣に不幸坐ってる

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