2011-10-16

かまちんの俳句 佐山哲郎

かまちんの俳句
佐山哲郎


漫画家かまちよしろう氏(愛称かまちん)には、毎月、私どもの編集している『月刊浄土』という雑誌に「さっちゃんはネッ」という4コマ漫画を二本づつ描いていただいています。また、地方新聞(たとえば静岡新聞、山梨日日新聞などなど十一紙)に「ゴンちゃん」という四コマ漫画が毎日連載されるなど、とっても偉い先生なのです。

  望郷はもう死語ですか皆の衆

おお「ペペル・モコ」。主人公の名前がタイトルなのに邦題は「望郷」。ジャン・ギャバンとミレーユ・バランが懐かしい戦前のあの映画。もちろん死語ですよね皆の衆。この「皆の衆」はもちろん村田英雄の、あの「皆の衆」です。「嬉しかったら腹から笑え」です。ですから、問いかけているのは着物姿で両手をひろげている村田さんです。かまちんではありません。

そういえば、かまちん原作の漫画がテレビ・ドラマになったことがあります。主演はなんとビートたけしでした。このように、かまちんは無意識にやらかします。

  はにかんでやがて淋しき風信子

  跨線橋一本の土筆になっている男

  手前生国は風吹かぬ土手のスカンポです

数多いかまちんの名作漫画のひとつに「ペンギン侍」があります。この三句はそのペンギン侍になったときのかまちんです。ペンギン侍はたいてい犬にバカにされます。なぜなら侍だからプライドがあるからです。こういうときのかまちんには少し意識があります。意識的にやらかします。驚くべきことに季語まで入っています。

  ちょっと待てそこにあるのはオレの過去
  お茶碗を父と名付けりゃ割れにけり
  むげえの雑貨屋高橋商店おやじのエプロンスリキレだあ

  大福の隣に不幸坐ってる

かまちんはその人物も見た目も枯れきった古木のようです。けれど、俳句を読むとまるで悟りきっていないのが一目でわかります。まだまだなにかこの世でいいことないかとクンクンしています。私はそんなかまちんが好きです。かまちんの句が大好きです。


かまちよしろう20句

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